■ wound ページ18
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「この銃弾が狙撃に使われたらしい」
『……はぁ、弾ですか』
内ポケットから取り出された、証拠品袋。
その中には、たった3発の銃弾が入っていた。
俺も山田も、銃について詳しくない。
だからそれを眺めつつも、話の流れを掴めずにいた。
「専門家に聞いたんだが、これは世に出回っているものではないらしい」
『そんなほいほい手に入ったら困りますよ』
「……まったく。そういうことを言っているのではないとわかるだろう」
嫌味っぽくため息をつかれ、Aの眉間にシワがよる。
ここへ来る途中、この男、つまりは警部とは関係が悪いと言っていた。
それがこういうことか、と静かに理解する。
「狙撃手自身が作り出したものだと言っているんだ」
『そうですか。ですが何故それを私に？』
「君ならこれを」
「おい、そんな言い方は」
『良いよ、マイク。黙ってて』
それは紛れもない、疑いの目。
否定したところで、相手は納得しないだろう。
警察は今回事件を起こした敵をずっと追っている。
そしてその敵が人を殺したのは、初めてだったそうだ。
仮にもし、Aがその犯人だったら。
人が死んでいるが故に、野放しにできるはずもない。
そう、客観的考えなければ、冷静さを保てなかった。
『また私を疑いますか』
「前回君が撃たれた件も、自作自演ではないと証明出来ないだろう？」
『イレイザーの目を疑うならば撤回を。ただ、私を疑うことは理解できますのでこの話はよしましょう』
カツン、と音を鳴らして地面に落ちたのは銃弾だった。
Aが握った手のひらから落ちた、その弾。
警部が見せたものと何の違いも見当たらない。
こんな状況で、俺の尊厳だけは守ろうとする彼女に、口を挟みたくなる。
だがそうすれば話がややこしくなるのは目に見えていて、黙っていること以外を許されない。
「イレイザー、マイク。バレットの見張りを頼むよ。君らとしても、ヒーローが人を殺したとなると痛いだろう？」
噛み付けなかったのは、Aが止めたからだ。
決して俺たちを見ることなく、彼女は手で静止を促した。
反論することが、俺たちの経歴に傷をつけるからだろう。
そんなこと、どうでもいいのに。
「バレット、こちらとしても君が関係ないことを祈るよ」
『警部もお気をつけて。また何かありましたら呼んでください』
振り返ったAの表情は、いつも通りだった。
それでもその拳は、血が滲みそうなほどに握られていた。
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ぽん、(プロフ) - Ableさん» ありがとうございます！一気に更新してしまったのですが、思い入れがある話だったので嬉しいです！ (2020年8月18日 18時) (
レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
Able(プロフ) - 完結おめでとうございます！一気読みしてしまいました。綺麗事だけではない話でとても切実で、読んでいて感動しました。二人の幸せを願うばかりです。面白い小説をありがとうございました！ (2020年8月18日 11時) (レス) id: cf9458e2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年6月13日 0時
