□ forsaking ページ14
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明日は山田にも話さなければ。
そんなことを考えながら、ソファの上に寝転がる。
家賃を払う金もないから使わせてもらっている雄英高校の一部屋。
根津校長には本当に頭が上がらないと、いつも思っている。
目を閉じても寝られないのはいつものことで、ため息をつく。
色々あって眠れなくなってしまったから、目の下のクマも深くなるばかり。
自分が弱っていくように見えて、情けなかった。
どう頑張ったって、私の人生の先は見えている。
いつ殉職するかわからないヒーロー職に就いて、生き延びたとしても、正直手元には何も残らない。
幸せに生きるには、多分、お金が必要だから。
いつ晴れるかわからない疑いの目に晒されて、今を生きている。
両親が捕まらなければ、何を言ったところで信じてはもらえない。
いや、違うだろう。
両親を、私が捕まえなければ、疑いは晴れない。
そんなこと、わかっている。
最悪の場合は、ヒーローとして殺さなければならないことだって、理解している。
そうしなければ、私は尊厳を保てない。
大人になって、両親のことも兄のことも、自分のこともヒーローのことも理解した。
だが理解してしまったからこそ、自分が置かれている立場に頭を抱えたくなる。
私がこう、基本的に無頓着な人間でなければ、ずっと前に壊れていてしまったかもしれない。
でもこの状況で狂わずに生きているからこそ、辛くなることがある。
本当は、相澤の優しさに縋ってしまいそうになった。
昔から、そうだった。
山田がしつこく声をかけてきたことで、共に過ごすことが増えたのだったと記憶している。
山田も相澤も白雲も、ずっと優しかった。
白雲が将来みんなで事務所を作ると言った時、私は家のことできっと迷惑になるからと断った。
だけど彼らはその気になるまで待ってるよ、と言ってくれた。
彼らの優しさが、どれだけの救いだっただろう。
特に相澤は、私の様子に敏感で、いつも話す前に雰囲気を悟っていてくれた。
先に理解していてくれるから、話しやすかった。
幸せは、私の中では願望になっている。
決して叶うことのない、叶える気のない願い。
だからこそ、誰かが与えてくれるというならば、欲してしまいそうになる。
相澤といられるなら、私は幸せだろう。
今よりもずっと、前を向けるだろう。
でもダメなのだ。
私では、相澤がダメなのだ。
そんなの、考えるまでもない。
わかるだろう。
だって、私たちはヒーローなのだから。
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ぽん、(プロフ) - Ableさん» ありがとうございます！一気に更新してしまったのですが、思い入れがある話だったので嬉しいです！ (2020年8月18日 18時) (
レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
Able(プロフ) - 完結おめでとうございます！一気読みしてしまいました。綺麗事だけではない話でとても切実で、読んでいて感動しました。二人の幸せを願うばかりです。面白い小説をありがとうございました！ (2020年8月18日 11時) (レス) id: cf9458e2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年6月13日 0時
