■ sane ページ13
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普通に話すし、普通に歩く。
それに普通に食事だって取る。
人間として当たり前の行動なのに、Aがすると安心感がある。
多分、フラッと消えてしまいそうなところがあるからだ。
『相澤、奢ってくれると言うならば、遠慮せずに食べるよ』
「いいよ。どうせ何日も食ってなかったんだろ」
両親とは、縁を切った状態になったと言っていた。
だがそれなのに、彼女の生活がここまで追い詰められているのは腑に落ちない。
いや、きっと、わかっている。
理解していて、考えたくないのだ。
Aがいない未来など、見たくもない。
金が欲しいから敵になったのでは、というのが彼女の見解だった。
一度法を侵したものは、もう縛られない。
欲しいならば、どんな手段でも使うことができるのだろう。
「……それで、お前の借金はいくらあるんだ？」
『うわ、それを訊くのか』
「まあ」
『額は、そうだな……ヒーローとしての全盛期を終えるまでの給料全部くらい』
ゾッとする、本当に。
生活費すらままならない今の状況が、今後何年も、下手をすれば何十年も続く。
ヒーローは、一攫千金を狙える職業ではない。
だからこそ彼女の人生は、もう目に見えている。
こんなにも、身を削って努力しているのに。
「……A」
『なに』
弱みにつけ込もうとしているわけではない。
それだけは、わかって欲しいと思う。
「俺と付き合おう」
『は……？ イカレてんのか、お前……』
「正気だよ」
可哀想だと思ったからではない。
哀れに思ったからではない。
このタイミングであったことに悔いはなかった。
何より、返事は決まっているのだから。
『……無理だよ、相澤』
「そうか」
『私はきっと、幸せになれる。けど、お前は私じゃ幸せにはなれない』
兄が願っていただけあって、Aは幸せを求めている。
だが自分自身がそれを求めているのに、一番に考えるのは相手のこと。
莫大な借金があることも、敵の娘であることも。
この世の中を生き抜くには、厳しい。
同じものを背負わせることを、彼女は容認しない。
「俺が幸せかどうかは俺が決める……と言いたいとこだが今日はやめておく」
『ずっとやめてくれるとありがたいね』
「それはどうかな」
『合理的じゃないだろ、それ』
答えは最初から知っていた。
ただ、理解して欲しかったのだ。
俺がAをずっと信じていること。
俺だけは何があっても味方でいるということを。
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ぽん、(プロフ) - Ableさん» ありがとうございます！一気に更新してしまったのですが、思い入れがある話だったので嬉しいです！ (2020年8月18日 18時) (
レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
Able(プロフ) - 完結おめでとうございます！一気読みしてしまいました。綺麗事だけではない話でとても切実で、読んでいて感動しました。二人の幸せを願うばかりです。面白い小説をありがとうございました！ (2020年8月18日 11時) (レス) id: cf9458e2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年6月13日 0時
