departure #1 ページ26
岩本は大きなリュックを背負い、一人で街を歩いていた。体は完全に治った訳では無いが、気が変わる前に街を出ようと思った。
一ヶ月もいなかったはずだが、とても長い間この街にいたような気がする。それだけいろんな事があったという事だ。
ゆっくり歩いていると、突然背後に何者かが現れたような気配を感じた。
何処からかつけられていたような感覚ではない。その気配は急に現れた。
自然と笑みを浮かべた岩本が振り返ろうとしたその時、ちょうど背後から声を掛けられた。
「ねえねえお兄さん」
岩本の背後に立っていたのは背の高い一人の青年。
黒いジャージの下に白いTシャツ、そして黒いスウェットを履いた彼は、今日は白いマスクをしていなかった。
ru「お兄さん、こないだ会ったばっかりだよね。どこ行くの?」
あの頃を思わせる口調で話すラウールに、場所は違えど、岩本も当時を想起する。
iw「さあ……決めてねえからな」
ru「……本当に行っちゃうの?」
iw「行くよ。そう決めたから」
ラウールは残念そうに微笑む。
ru「……そっかあ、残念だなあ」
あの時と全く同じように、彼は頭の後ろで手を組んで空を見上げた。
何が起こるかは岩本ももう知っている。岩本はラウールと同じように空を見上げた。
電柱の上に立つ人影が見える。顔までは見えずとも、それが誰かは岩本も知っている。
しかし、彼が降りてくる気配はなかった。岩本に合わせる顔がないと思っているのだろう、気持ちはわからないではない。
岩本が首を下ろすと、ちょうどラウールと目が合った。彼も苦笑いしていた。
ru「もう……僕呼んでくるね」
ラウールが飛ぼうとした時、微かに頭上で音がした。彼が心を決めたようだ。
ふわりと降り立った彼は何の武器も持っていない。そして何も言わない。目線を下に落として唇を噛んでいた。
岩本とラウールは彼を挟んで目線を交えて微笑みあった。静かに彼の言葉を待とう、と。
しばらくして、彼は俯いたままではあるが、ついに小さく口を開いた。
mg「……岩本くん」
決して名前を呼ぶ事のなかった彼が、確かに岩本の名前を口にした。
岩本は思わず再びラウールに目をやった。彼は嬉しそうに笑顔を輝かせていた。
iw「おう、どうした」
岩本も目を細め、未だ俯く目黒の次の言葉を待つ。
mg「ごめんなさい」
目黒は突然深く頭を下げた。岩本は一瞬驚いたが、すぐに気を取り直して彼を見守った。
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hanako(プロフ) - 完結ありがとうございますおめでとうございます泣泣面白すぎて文章とストーリーと全てが秀逸すぎて物語に入ってました完全に、、。何年後かのお話も読みたいくらいこの物語が終わってしまったことが寂しいです泣映像として見たいくらい好きでした、、泣 (2022年12月21日 17時) (
レス) @page34 id: 51201bff50 (このIDを非表示/違反報告)
み〜な(プロフ) - 完結おめでとうございます!! この作品はとっても面白くて2日で読み終わってしまいました!!笑 他の作品も楽しみにしています!! (2021年3月30日 8時) (レス) id: 1e805574bf (このIDを非表示/違反報告)
ももこ - 完結おめでとうございます！最近見つけて、一気読みしてしまいました。文だけでこれ程に感情が動かされるのかとびっくりしています。本当に素敵な作品だと思います。完結まで書いてくださって本当にありがとうございました！ (2021年1月22日 17時) (レス) id: 7c7dd69b89 (このIDを非表示/違反報告)
末崎時野(プロフ) - 完結おめでとうございます!初見で一気読みしてしまいました。心情が伝わってきて、知らぬ間に泣いてました。悲しい結末のように思ったけど、そこを明るい方へと向かっていくのは凄く良かったです。 (2020年12月6日 1時) (レス) id: 3af4ab9a04 (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても心動かされる終わり方で、今胸が苦しくてたまりません。笑 タイトルの回収の仕方もとても好きで情景が浮かびました。お金を払いたくなってしまうほど完成度の高いFFをありがとうございました！ (2020年12月5日 2時) (レス) id: 22c1ddb176 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜
| 作成日時：2020年11月23日 17時
