#2 ページ7
iw「佐久間、阿部と知り合いだったのか」
布団に寝かせられた岩本は、脇に座る佐久間に上目遣いで尋ねた。
sk「昔からの知り合いではないんだけど、こないだ俺が阿部ちゃんにたす……、」
助けてもらった、そう言いかけて佐久間は止まった。
本当の事を言えば自分が倒れた事が＿＿体調が悪い事がばれてしまう。
dt「佐久間?」
sk「っと……俺が阿部ちゃんを助けたの。阿部ちゃん道に迷ってたからいろいろ教えてあげた」
iw「……そうか、」
果たして誤魔化せただろうか。佐久間は密かに音波を当ててみたが、岩本も宮舘もなんとも言えない神妙な表情をしていた。
佐久間は自身の事に深く突っ込まれる前にと、阿部と話した事を自分から打ち明け始めた。
嘘は言わない。事実を一部隠すだけ。
sk「阿部ちゃんにも俺の目が見えてない話とかしたんだけど、その時阿部ちゃん自分の事みたいに怒ってくれたんだよね。なんで佐久間ばっかりって……だから凄く良い人だと思ってた」
岩本は阿部の話を思い出した。自分も辛い過去を背負っているからこそ、佐久間に共感したのだろう。
sk「でも照といたって事は阿部ちゃんもそっち側、って事だよね」
iw「まあ……そうだな」
dt「あいつが言ってた阿部ちゃんって、そいつの事?」
iw「……そういえばふっかが言ってたか」
佐久間は俯いたが、大事な事を思い出して勢いよく顔を上げた。
sk「待って!」
dt「どうしたの」
sk「阿部ちゃん、「普通」の人間なんだよね……?」
dt「え?」
iw「は……?」
sk「なのになんであいつと一緒にいるの……?」
岩本は一瞬理解が出来なかった。佐久間はどうして阿部が「普通」の人間だと思っているのか。
しかしよく考えて、理由がわかった気がした。
iw「……阿部がそう言ったのか」
sk「言った」
岩本は佐久間から目を逸らして天井を見上げた。
阿部は佐久間を利用しようとしたのだろうか。それで自分は「普通」だなんて嘘を吐いたのだろうか。
＿＿佐久間には、真実を伝えた方がいいのか。
sk「ねえなんで? なんで阿部ちゃんはあいつらと一緒にいるの?」
戸惑う佐久間を見て岩本は決心した。
阿部が「異端」である事を伝えなければいけない。ここで目を覚まさせなければ、きっと佐久間はさらに苦しい思いをする。
iw「佐久間、」
sk「……照」
縋るような顔の佐久間に、岩本ははっきり伝えた。
iw「阿部は……「異端」だよ」
その時の佐久間の表情を、岩本はきっと忘れない。
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作者名：怜
| 作成日時：2020年11月16日 20時
