lier #1 ページ6
阿部と岩本の姿を把握して佐久間は立ち尽くしていた。
どうして阿部が＿＿「普通」の人間であるはずの彼が岩本を襲っているのか、佐久間にはとても理解できない。
阿部も佐久間の顔を見て固まっていた。岩本への怒りなど一瞬で吹き飛び、全身の血の気が引く感覚がした。
どうして、どうしてこのタイミングで、よりによって佐久間が来たのだ。
sk「どういう事、ねえ」
佐久間は悲痛な声を絞り出す。阿部は佐久間を絶望の表情で見つめるだけで、何も答えられない。
二人が知り合いである事を知らない岩本は、この状況にただ戸惑っていた。
sk「阿部ちゃん、」
佐久間が再び阿部の名を呼んだ時、阿部は歯を食いしばって駆け出した。
何も言わずにその場から逃げた。もうそうする事しか出来なかった。
sk「待ってよ!!」
佐久間が叫んでも阿部は止まらなかった。佐久間は追いかけたかったが、岩本を置いていく訳にはいかない。
それに、追いかける体力もない。佐久間はやりきれない表情で岩本に寄り添った。
sk「……照、大丈夫?」
iw「多分……でも、なんで」
sk「急にラウが泣き出したんだよ、めめやめてって。だから嫌な予感がしてめめを探しに来たら……」
阿部が岩本を追い詰める現場に遭遇した。佐久間は続きを口にはしなかったが岩本は汲み取った。
sk「これ……阿部ちゃんがやったの」
iw「……違う、」
sk「じゃあめめ?」
iw「……そう」
sk「……そういう事か、」
隠すだけ無駄だと判断した岩本は正直に話した。佐久間の口が悲しそうに歪む。
sk「でもなんで……なんでなの……?」
佐久間は一度嘆くと首を振った。
sk「ごめん、まずは照と一緒に帰らなきゃね。動ける?」
佐久間は小さな体でなんとか岩本を立ち上がらせると、肩を担いで歩き始めた。流石に佐久間一人で岩本の体全てを支えるのは辛いので、岩本は出来るだけ建物等の壁に手を付きながら歩いた。
佐久間は必死に岩本を運んだ。自分の体力が少ない事を悟られぬよう、必死に。
なんとかカフェに戻ってからは、宮舘の力も借りて岩本を自室に運んだ。佐久間が外に出てからは宮舘がラウールを見ていたが、彼は落ち着いてすぐに眠ってしまったらしい。
dt「酷いな、」
sk「折れちゃってるかな……?」
iw「いや、大丈夫……多分」
dt「明日診てもらおう」
岩本は頭を殴られた衝撃からある程度復活し、それなりに普通に会話出来るようになった。
そこで、岩本は佐久間に阿部との関係を聞き始めた。
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作者名：怜
| 作成日時：2020年11月16日 20時
