reunion #1 ページ21
深澤と渡辺は五階にいる。
それをわかっていた二人は、一刻も早くケリをつけて向井達と合流しようと、足早に階段を上った。
薄暗いコンクリートの中を駆け上がっていると、四階に差し掛かった所で風を切る音が聞こえるのと同時にとん、と小さな音が聞こえ、宮舘が急停止した。
何があったのかと直ちに岩本も足を止めると、宮舘の足のすぐ側に短く太い針が刺さっているのを見つけた。あと少し止まるのが遅ければ、それは宮舘の足に刺さっていたはずだ。
宮舘は針をじっと見つめていた。誰がやったのか、確認するまでもないと言わんばかりに。
岩本は代わりに針が飛んできた方を睨みつけた。
階段の一番上、煙草でも吸っているかのように気怠く座った渡辺が、構えていた吹き矢を降ろして岩本達を見ていた。
iw「翔太、」
nb「ここから先は照だけ……関係ねえ奴はこれ以上進ませない」
感情の読み取れない顔で渡辺は言った。
dt「言われなくたってこの先には行かないよ」
渡辺は岩本ばかり見て宮舘を見ようとしない。宮舘も針を見つめたまま。
そんな様子を見ていれば、二人の関係がどれだけ歪かは岩本にもわかる。聞いていたよりも二人の心はすれ違っているのかもしれない、とすら思えた。
iw「……舘さん、」
nb「俺照以外連れてくんなって言ったんだけど」
iw「誰に、」
dt「康二でしょ」
nb「名前は知らねえ、けど警察だって言ってた」
dt「何か話したんだってね。何話したのか聞いたけど、あいつ何も教えてくれなかったよ」
nb「……使えねえ」
言葉を交わしてもなお、二人の視線が交わることは無い。
岩本は深呼吸をすると渡辺に向き直った。
ここに自分はいるべきでは無い。自分は行くべき所に、会うべき人の元へ早く向かった方がいい。
早く二人だけの時間を作った方がいい。そう強く思った。
iw「翔太……通してくれ」
岩本がそう言うと、渡辺はゆっくり立ち上がって階段を降り始めた。それを見て、渡辺が降りきる前に岩本も足を進めた。
階段の中腹で二人がすれ違う。
一瞬だけ、二人は足を止めた。一言だけ、二人は小声で交わした。
nb「……せいぜい頑張って」
iw「お前もな」
互いに前を向いたまま、二人は再び足を動かした。
岩本は深澤に会うために階段を上っていく。
渡辺は階段を降りきると、吹き矢をしまってようやく宮舘をちゃんと見た。
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時