或る街の群青二 (ページ11)

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#2 ページ11

向井はここ数日ずっと街中を探し続けていた。
知り合いに会えば誰かを匿っていないか尋ね、何処かに目黒達がいないか目を凝らした。
何日も手がかりを得られずとも必死に探し続けた。それしか自分には出来る事がないから。

そしてついに事態は動いた。
その日の夜、向井が引き上げようと帰路に着いた時、見覚えのある背の高い男が空から降りてくるのが見えた。
顔はよく見えずとも、こんな時間に空を彷徨う男なんて一人しか思いつかない。

kj「めめ、」

左手に金属のスコップらしきものを持った彼はどこかの建物に入っていく。
それを見届けた向井はすぐに走り寄り、目黒が入ったであろうビルの前に立った。
向井の記憶が正しければこのビルにテナントは一つも入っていない。取り壊しが面倒だといって廃ビルのまま放置されていたはずだ。ここなら誰の許可も取らずに仮住まいくらいには出来る。

深澤達はここにいる。
そう確信した向井は、拳銃を携帯している事を確認してゆっくり中に入っていった。私服ではあるが、深澤達を探すようになってから向井は拳銃を持ち歩いていた。

慎重にフロアを見て回ったが一階には誰もいなかった。二階にも誰もいない。
向井は不安と恐怖と戦いながら、暗く埃っぽい廃墟の中、足を進めていく。なんとしても、深澤達の居場所を突き止めて岩本達に知らせなければ。

三階まで進んだが誰もいない。向井は警戒しながら四階まで来た。
このビルは五階建てだ。ここにいなければ必然的に深澤や目黒は五階にいることになる。
向井は短く息を吐いて、四階をゆっくり歩いて回り始めた。

かつてスナックやバーが入っていたであろう場所の扉を一つずつ開けて回るも、誰かが中にいる気配はない。
ここにも誰もいないのか。やはり五階にいるのか。
そう思った向井は階段へ向かおうとした。その時。

「……誰」

背後から聞いた事がない男の声が聞こえ、向井は素早く振り向いて拳銃を構えた。相手は口元に小さな筒のような何かを構えている。

向井は記憶を急いで辿った。深澤でも目黒でもない、なら彼は阿部か渡辺のどちらかだ。生憎向井はどちらの顔も知らない。
岩本が襲われた時に阿部が「兎」だとは聞いた。攻撃系の能力ではないからあんな武器を使うのだろうか。それとも、彼は渡辺なのか。

「お前、照の仲間?」
kj「……だったらなんや」

向井の疑問に彼は答えてくれた。

「じゃあ……涼太も知ってるの」

彼は宮舘の知り合い＿＿渡辺だ。