#3 ページ23
nb「……昔は吹き矢なんて持ってなかったけど、俺なら襲ってきた奴等吹っ飛ばすくらい出来た」
dt「翔太、」
nb「吹っ飛ばした隙に、その辺の石でもこめかみにぶつけてやれば簡単に殺せた」
dt「翔太」
nb「なのに俺はびびって何にも出来なかった、だから」
dt「いい加減にしろよ!!」
宮舘が堪らず叫んで、ようやく渡辺は話を止めた。
荒れた呼吸を整えてから、宮舘は胸の内を吐露した。
dt「あれでよかったんだよ、」
nb「そんな事言うなよ」
dt「俺はただ、翔太に人殺しなんてして欲しくなかっただけだ。昔も……今も」
渡辺は一瞬言葉に詰まったが、負けじと言い返した。
nb「俺だって……涼太にこれ以上苦しんで欲しくなかっただけだよ」
宮舘は渡辺のために人を殺し、渡辺は宮舘を想って人を殺した。
その結果、宮舘は全てを捨てて逃げる事になり、渡辺は自分では止まれない所まで来てしまった。
お互いを想うあまり、自分の首を絞めるような状況へ自らを追い込んだ。
dt「なんか……馬鹿だな、俺達」
そんな事実にやっと気付いた宮舘は、思わず呆れた笑みを浮かべた。渡辺は黙り込んだが、否定はしなかった。
nb「……あのさ、」
しばらく沈黙が続いた後、渡辺は口を開いた。
nb「今、何してんの」
dt「今? 今、は……カフェ開いて、いろんな人と一緒に住んでる」
渡辺の問に宮舘は一瞬戸惑いを見せたがすぐに答えた。
直感的に、渡辺の質問の意図を理解したような気がした。
dt「めめとラウ__えっと、暴れてた「鴉」とその弟、あと「海豚」がうちに住んでて。あ、照を拾ったのも俺」
nb「……あの兄弟が、」
dt「ラウも知ってるの?」
nb「知ってるも何も、あいつを最初に誘拐したから」
dt「……そうか、それでめめが助けに行って、」
nb「そこからはまあ……うん、ごめん」
dt「それは二人に言って」
宮舘は少し逸れた話題を元に戻し、渡辺の意図に応えようとした。
dt「あの二人、早くに捨てられて、辛い思いもしてきたはずなのに、凄く純粋でまっすぐなんだよ。だからそのまま大人になって欲しいって思ってる」
nb「うん、」
dt「常連もいて、友達もいて、可愛い兄弟もいて……楽しいよ」
渡辺はきっと、立ち止まろうとしている。
そのために宮舘に出来る事。それは、渡辺が足を進める理由を取り除いてやる事。
dt「治安の良い暮らしはしてないけど、幸せだよ……昔の罪に見合わないくらいね」
宮舘がもう、苦しんではいない事を証明する事。
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時