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向井は次の日開店と同時にカフェに飛び込んだ。いつになく真剣な顔で来た向井を見て、宮舘は何かが起きた事を察した。
岩本はまだ自室で安静にしていた。佐久間もいなかった。風邪気味らしい。
dt「何かあった?」
kj「わかったで、翔太くん達の居場所」
宮舘は思わず手を止めて向井の顔をまじまじと見た。向井は頷いてみせる。
kj「これで照にぃはふっかさんの所に行ける。めめを助けにも行ける。ダテも翔太くんに会える……遅くなってほんまにごめん」
宮舘はしばらく固まっていたが、我に返ると控えめに微笑んだ。
dt「いや……康二は凄いよ。本当にありがとう」
kj「ダテ?」
宮舘がどことなくぎこちない事に向井は気付いた。
dt「違うんだ……いざ翔太に会いに行くってなるとどうしても緊張するというか、どうしていいかわかんないっていうか」
kj「あーそういう事か」
向井は納得するといつもの席に座り、宮舘を上目がちに見る。
kj「実はな、昨日翔太くんと話したんよ」
dt「……本当に?」
kj「うん」
宮舘は向井の飲み物を用意していたが、向井の言葉で再び動きを止めてしまった。
dt「何、話したの」
kj「んー……」
向井は渡辺との会話を思い出して少し考えると、やがてにやっと笑ってみせた。
kj「俺からは聞く必要ないと思うで」
dt「なんで、」
kj「ちゃんと自分で話した方がええよ」
向井は勿体ぶって教える気が無いらしい。
そう悟った宮舘は、ため息を吐くとその話題をやめた。
dt「……ちゃんと照にも伝えて来てね、ってかそっちが本命だし」
kj「勿論。今おる?」
dt「部屋」
向井はそれを聞いて岩本の部屋に向かった。
岩本に深澤の居場所がわかったと伝えると彼は驚いた顔をしたが、特別それ以上の反応はしなかった。
向井はそれが気になったが、気が動転しているのかもしれないと考えて深く聞く事はせず、そのまま部屋を出た。
向井がいなくなった後、岩本は目を閉じて考えていた。
ついにこの時が来た。全てを終わらせる時が。
宮舘達には岩本の体が回復したら一緒に深澤達の元へ行く、そう話していた。しかし、岩本は腹を括っていた。
自分のせいだ。自分のせいで、みんな苦しんだのだ。
その落とし前は自分で付けなければいけない。全て、自分で。
体はまだ痛むが動けない訳では無い。きっとなんとかなるはずだ。いや、なんとかする。
そうして岩本は裏口から出て一人で深澤の元へ向かった。
それを彼が見ていた事には気づかなかった。
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時