或る街の群青

#2 ページ43

sk「ちょっと待って」


すぐに異議を申し立てたのは佐久間だった。佐久間の顔が真っ直ぐ岩本を見つめている。


sk「本当にそれでいいの」
iw「そうすれば少なくとも目黒は元に戻る」
sk「本当にいいの?」
iw「それでみんなに迷惑がかからないなら、」
sk「俺からすれば戻った照が苦しむのも嫌だよ」


目は隠れていても、彼がとても真剣な顔をしている事はよくわかった。


sk「前もしたじゃんこの話。今戻ったら結局何も変わらないんでしょ」
iw「……変えられるかもしれないだろ」
sk「はっきり言うけど、そう思って何度も失敗したからこの街に来たんでしょ」


岩本の小さな反論は佐久間に呆気なく潰される。岩本が言葉に詰まったのを察して佐久間は続けた。


sk「照が戻ったらみんな今までの生活に戻るんでしょ。俺達は適当に毎日生活して、照達はいろんな人を殺していくんでしょ」
dt「今までの生活には戻らないよ……照が苦しんでるんじゃないかって思いながら毎日過ごす事になるんだよ。あと俺は……翔太がどうしてるのかもずっと考え続ける事になる」


あれから考えて、宮舘は渡辺に関して何も行動は起こさない事にしていた。今回の件に関わっていれば、いずれその時が来ると思ったからである。
宮舘が加勢すると、その後向井も続いた。


kj「なんか、こんな事言っていいんかわからんけど……俺らを、ってかめめ達を守るために照にぃが戻ったなんて言うたら、めめもラウも傷つく気すんねんな」
dt「少なくともめめは絶対に自分を責める、あいつはそういう性格」
sk「そうなったらラウにも影響しちゃう」
kj「照にぃが戻らんでもめめを助ける方法、あるはずやろ」


三人がかりで説得され、岩本はもう何も言い返せなかった。
目黒とラウールの事を本当に想うなら、正しい言い分をしているのは彼等だと思った。


iw「……わかった、戻らないよ。変な事言って悪かった」
dt「何も変な事は言ってないけどね」
sk「よし、じゃあ頑張ってめめを助けないと」


岩本の言葉に安堵した三人は、各々自分の役割にとりかかった。
向井は退店して目黒の行方を探しに、佐久間はラウールの面倒を見に、宮舘はいつ目黒が戻ってきてもいいように翌日の開店準備を。


そして岩本は向井と同様に街に出た。
日が完全に落ちてからも目黒を探し続けた。何処かで必ず彼を見つけられると、助けられると信じて。






「みーつけた」


その頭上で、満月を背負った鴉が不気味に鳴いたのも知らずに。

移行します。11/16→←waver #1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す