crash #1 ページ26
その日も目黒とラウールは元気に物盗りに出かけていた。
気弱そうな男を捕まえて、いつも通りにリュックを奪い取る。
そしていつも通り、ラウールは奪った荷物を抱え、鼻歌を歌いながら一人で空を飛んでいた。
ru「ふーんふん、ふーん」
いつも通りなのはここまでだった。
突然、下から猛スピードで飛んできた何かがラウールの抱えたリュックに当たった。その勢いでラウールもややバランスを崩した。
ru「え!?」
慌てて体勢を立て直したラウールは荷物を確認した。何かが当たった場所には刃物で裂かれたような穴が空いており、そこから中身が落ちかけている。
ru「待って待ってこれはやばい」
流石に地上へいろんなものを落としながら飛ぶのはまずい。ラウールはリュックの穴を押さえながら慌てて地上に降り立った。
ru「えー何が飛んできたの……」
ラウールがどうしようかと立ち尽くしてリュックを見つめていると、左肩に衝撃を感じた。
突然誰かがぶつかってきたせいでラウールは思わず尻餅をつく。
ru「わっ!」
「あっ、ごめんなさい!」
ラウールが顔を上げた先にいたのは一人の男性。ラウールの前にしゃがみ込み、心配そうに彼の顔を覗き込んでいる。
質の良さそうなロングコートを着こなす茶髪の彼を、ラウールは見た事がない。
この街の人間じゃない。ラウールはそう感じた。こんな服、こんな街で手に入れられるとは思えない。
「ごめんなさい、怪我してない?」
ru「大丈夫、です」
「そう、ならよかった」
彼はそう言って一瞬ラウールの背後に目を向けると、再び視線を戻して微笑んで見せた。
ラウールは嫌な予感がして、咄嗟に彼が視線を向けた方を振り向いた。
男が何かを持って立っているのを見たのと同時に、ラウールの喉元に針のような何かが刺さる。その事実を理解した瞬間、ラウールの意識は遠のいていった。
ゆっくりと倒れていくラウールの体を受け止めたのは、彼にぶつかった男＿＿阿部だった。
ab「……さんきゅー翔太」
nb「そいつ効かなかったんだ」
ab「効かなかった、残念」
対して残念でも無さそうに阿部は言うと、喉の針を抜きながらラウールの体を抱えてよいしょ、と立ち上がる。
ab「早く手伝ってよ」
nb「はいはい……ったく、ふっか自分で動けよあいつ」
ラウールの体を抱えた二人はゆっくりと何処かへ歩いて行く。
彼に何があったか、カフェにいる岩本達は知らない。
mg「……ラウ?」
勘づいたのは、夢中で拳を振るう兄だけ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 885人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - 如月ﾖｼﾉ。さん» わーありがとうございます! 直しました! これからももし見つけたら遠慮せずに教えてください……! ありがとうございました! (2020年11月8日 11時) (
レス) id: f87dad8c17 (このIDを非表示/違反報告)
如月ﾖｼﾉ。(プロフ) - 岩本"が"「狩猟豹」なのは＿。 が 岩本"か"「狩猟豹」なのは＿。になってますよ！細かいところですみません。 (2020年11月8日 0時) (レス) id: 3bc10946d5 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 如月ﾖｼﾉ。さん» いつもコメントありがとうございます! 更新頻度がだいぶ遅くなるとは思いますが、何卒お付き合いよろしくお願いします! (2020年10月24日 11時) (レス) id: 4e2a0ba139 (このIDを非表示/違反報告)
如月ﾖｼﾉ。(プロフ) - 新しい作品楽しみにしてました！更新応援してます！ (2020年10月23日 0時) (レス) id: 3bc10946d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年10月22日 23時
