03.スリザリン ページ5
「納得がいかん。」
「え〜、そうかなあ?」
緑と銀に染まったネクタイ。
それを見ながら呟いた言葉をあいつは不思議そうにしながら拾った。
こいつが狡猾で目的のために手段を選ばないやつだというのは納得がいく。
だが、なぜ、俺がこいつと同じ寮に入らなくてはいけないのか。
まさか組み分け帽子にもこいつお得意の魅了が使えるのか?
「私はリドル君と伊吹君、二人と一緒で嬉しいけどな〜」
「僕もさ、カーマイン。知り合いがいるというのは心強いね」
二人は楽しげに談笑をしながらどういう仕組みなのか皿の上に出てきた料理を摘んでいる。
俺はというとこの現状もこの女と同じ寮だと言う事実もどちらも理解できず、行儀は悪いがフォークで赤の女王が勝手に取り分けた料理をつついていた。
行儀が悪いよーと赤の女王が言うのを聞き流しながら俺はようやく一口口に含む。
……こんな状況でも美味い物は美味い。
食欲が無いながらに少しずつ食べ進め、それから後で赤の女王にどういう状況なのかを尋ねようと思った。
新入生歓迎だの何だので時間を食ったが、どうにか赤の女王から聞きだそうと試みた結果あいつの手紙をもらった。
その文を見た瞬間破り捨てたい気分になるも、現状彼女の元から逃げると言う選択肢がなくなったことに気がつき絶望しかける。
しかし、その手紙を呆然と見つめていたとき、ふと気がついた。
彼女の字に見覚えがある。
どこで見たのか、そもそも彼女と知り合いだったのか。
あそこまでの美貌ならば一度見ただけで忘れられないような気がする。
しかし一向に思い出せない。
……気のせいだったのだろうか?
「それ、どこの言葉なんだい、コウジ」
「……日本」
声をかけられてようやく気がつく。
どうやら先ほど戻ってきて、ずっと覗き込んでいたようだった。
「そっか、道理で見覚えの無い文字だと思った」
これからは少し注意が必要かもしれない。
特に、日本語が読めるとわかっている相手がいる場合は。
幸いなことにリドルは日本語がわからない。
だが恐らく、こいつは賢い部類に入るだろう。
そのうち日本語を習得して読んでしまうかもしれない。
二人は日本から来たの、と尋ねてくるリドルに応えながら、思わずため息を吐いた。
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