27.再会を願う ページ28
水瀬 葵だったかしら。ちょっとした怪我をして保健室に頻繁に来ていたので覚えている。
彼女は私の手をしっかり握りしめ、窓の方へ引き上げようと踏ん張る。
一生懸命引き上げようとするが、握りしめる力は段々と弱くなっていく。普通に考えて自分より大きい、しかも成人男性を引き上げるなんて到底無理だ。
……新出先生なら、この子を巻き込むわけにはいかないと思うのだろう。
「無理しなくていいよ。今の高さからなら骨折程度で済みそうだからね」
「ちょ、先生何言ってるの!?私がその場にいるんだから助けるに決まってる……っでしょ!」
彼女は一瞬驚いた顔をすると苦しそうにしながら笑い、意を決したように言った。
「ねぇ先生、10秒間だけ目を瞑ってもらっていいですか?」
「え?」
急にこの子は何を言い出して……?
「このままじゃホントに落ちて大怪我しちゃいます!手が結構限界で……私がカウントするんでお願い!」
でも、無傷で助かる方法があるなら彼女に従うべきか。一体どんな方法か凄く気になるけれどここは大人しく目を閉じよう。
言われた通り目を瞑るとバチバチと何かが鳴る音と、一瞬だけ手を離され、下から押し上げられるような感覚がした。
彼女が10秒を数え終わる頃には私達は階段の踊り場に座りこんでいた。
「……本当に戻って来れた」
目を閉じろと言われても何をするのか気になり、気づかれないように薄目で開けていたけれど、何が起こっていたのかはよく分からなかった。
下から押し上げられたということは分かるけれど物理的に考えて無理だ。壁に足場なんてなかった。一体どうやって?
「はぁ……新出先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。助けてくれてありがとう。それにしても一体どんな手を使ったんですか?とても気になります」
肩で息をする彼女は尋ねられて一瞬肩が跳ね上がる。
「……え、えーと」
そして目を少し泳がせて困ったように笑って人差し指を当てた。
「秘密ですっ」
***
あの子の優しい困り顔は今でも覚えている。
「……モット」
当分はあの学校に潜入することは無いと思うけれど、どこかでまた会えれば
「ベルモット!」
目の前にいつの間にか金髪で褐色の肌をした男性、組織の仲間が立っていた。
「……あら、バーボン。遅かったわね」
任務中だったわね、こんな事考えるなんて私らしくもない。
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星空ブリキ(プロフ) - このお話めっっっっっちゃだいすきです!!!!!!! (2023年3月7日 22時) (レス) id: 2cdbc326e2 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - 颯さん» わざわざコメントありがとうございます!!なるほど、普通に文にするのもありですよね、参考にさせていただきます!! (2021年2月25日 21時) (レス) id: 2b1ed576a3 (このIDを非表示/違反報告)
颯(プロフ) - 2章のタイトルちょっと思いついたんですけど、監視対象が見た純黒の悪夢とかどうですかね。参考程度にどうぞ (2021年2月25日 19時) (レス) id: e2ffa37dcb (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - 莉咲さん» タイトルが魅力的だなんてとても嬉しいです!!二時間も時間を使って見つけてくださりありがとうございます!!( ´;゚;∀;゚;) (2020年11月26日 21時) (レス) id: 2b1ed576a3 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - 。。。さん» わあああ!わざわざコメントありがとうございます!(*^▽^*) (2020年11月26日 21時) (レス) id: 2b1ed576a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎもち | 作成日時:2020年4月12日 16時