86.雨の日の追走 ページ17
路地裏を抜け大通りに出て辺りを見回す。雨が小降りになってきたがそれでも視界が悪く、傘で顔も見えにくい。でも確実にこの辺りにいるはずだ。
人混みの中、背伸びをしながら見回していると少し遠くの横断歩道の前で自分と似たような髪の色をした人が傘の隙間からちらりと見えた。
自分の後ろ姿とそっくりな人物を見つけ、鳥肌が立つ。
「……ッ見つけた!」
彼女を見つけた瞬間、素早く傘を畳み走って追いかける。
雨なんて気にしてられない、この距離なら駆け足で追いつけるはず。
あっちは逆探知とかで私に存在に気づいたりしてるのかな。
話して聞きたい事が沢山あるけれどバイトの時間もあるしこれ私どうすれば……。
うーん、いやきっとどうにかなるはず!
そんなことを考えている間に目の前まで迫っており、私はすかさず横断歩道で待っている彼女に向かって名前を叫ぶ。
「水瀬葵!」
信号が青に変わり、待っていた人が一斉に動き出す。
私の名前に反応した少女は足を止めてバッと顔だけこちらを振り向いた。
「貴方は……」
同じ色の目がかち合う。突然自分と瓜二つの外見を捉えた彼女の目は大きく見開かれた。
その間に私は距離を詰め、手を伸ばす。
「ギブソンってアンタなの!?」
「っ離してください!」
彼女は傘を持っていない方の手で伸ばした私の手を払いのけ、走って横断歩道を渡り始める。
「あっ、ちょっと!」
ギブソンと思われる少女は傘を閉じると人混みの中をするすると上手に掻き分け、一気に私との距離を離していく。
一方、私はこの人混みを通るのに他人の傘が邪魔で思うように追うことができない。
「はっや……」
本気で追うことも考えたが、一旦見逃すことにした。どうせ今追っても時間ないし。
とりあえず本当に私のクローンがいるってことは間違い無さそう。
彼女を追うのを一旦諦め、人の流れに沿いながらUターンする。
私とまともに会話をせずにすぐ逃げるということは後ろめたいことがあるということでいいのかな。
でもまぁやっぱり黒の組織で活動してるんだろうなー。
そこに所属してるってことは安室さんも知って……るのか?そもそもいつ組織に入った?協力者は?
私の髪のメッシュは高校入学後に染めたけど髪色まで真似る理由は?私に成り代わるため?
彼女に対する疑問は尽きなかった。
「うぅ、ちょっと寒くなってきた」
着ている服が雨を吸い、肩がじんわり冷たい。早く戻ろう。
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よもぎもち(プロフ) - アリアさん» そうです、オマージュさせていただいてます!ありがとうございます!! (2022年4月27日 2時) (レス) id: 2b1ed576a3 (このIDを非表示/違反報告)
アリア(プロフ) - コメント失礼します!この話ってもしかしてなんですけど、【とある科学の超電磁砲】って話を元にしてませんか??すごく面白くて好きです!! (2022年4月26日 15時) (レス) @page12 id: 9a7bd0b00e (このIDを非表示/違反報告)
藍梨(プロフ) - 見てもらえるとうれしい( ´∀`)です (2022年3月13日 11時) (レス) @page14 id: 42bd1ecc91 (このIDを非表示/違反報告)
藍梨(プロフ) - よもぎもちさん» イメログの夢主ちゃん描かせていただきました!シリーズにあります (2022年3月13日 11時) (レス) @page14 id: 42bd1ecc91 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - べにまる。さん» 好きと言っていただけてとても嬉しいです!イラスト嬉しいです、ぜひ見せてください! (2022年3月7日 14時) (レス) id: 2b1ed576a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎもち | 作成日時:2021年9月14日 17時