【04】さかな座流星群 ページ4
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天馬くんたちと別れた帰り、東の市場はいつもより活気づいていた。星夜祭(流星を観測する冬の大イベント)まではそれなりの期間があるにしろ、あきんどは既に動き出しているらしい。よいリンゴはまだ残ってくれているだろうか。冷え冷えとしだした空気にもまれ、手先をポケットの中で擦り合わせる。
市の道は広く長く、おまけにどこも似たりよったりの風貌で入り組んでいるので気を抜くとすぐに自分の居場所が分からなくなってしまう。青果のテントはどこにあっただろうか。夕飯どきになるとそこかしこから美味しそうな香りがして、早く家に帰りたいという気持ちが急いた。喧騒の中、ふいに俺の背中に声がかかる。
「あれ、マサキ？」
「･･･緑川さん」
やっほ。元気そうじゃん。
緑川さんはパリジャンのはみ出た紙袋を抱え、気さくな笑顔をつくってみせた。それとなく足並みを揃えることは嫌でなかったし、世間話を交えながら俺の目指すリンゴ売り場まで雑踏をかき分けていく。話の途中にふと見たこの人は、なんだか前よりぐっと大人びているように見えた。
これはあまり俺の知るところではないけれど、十年前に"お父さま"が亡くなってから施設はしばらく大変だったらしい。今は凛とそびえ立つあの立派な建物も、焼け野原から始まり、瞳子さんや緑川さんらの努力もあってどうにか持ち直したのだとか。木箱にたくさん詰められたリンゴを一つひとつ物色しながら会話を続ける。市場が騒がしいから、少し大きな声を出す必要がある。
「緑川さんは背丈が伸びましたね。先生は、ちっとも変わってませんが」
「まあ、Aは女の子だから。マサキなんか背が伸びるのはこれからだ。今よりうんと大きくなったらマサキがAを守ってやるんだよ」
「俺が守る？ あの人を？」
艶のいいリンゴを握って、俺は顔をしかめた。俺は先生の上背を越したが、だからって力関係まで逆転することはないだろう。すると緑川さんはあははと快活に笑い、同じように木箱から上等なものを触れることなくふわりと浮きあげて、止める間もなく俺のぶんまでまとめて支払った。
「Aを頼んだよマサキ。彼女、さみしがりなんだ」
リンゴは焼きリンゴかチーズパンにしてもらうといい。あれはシナモンが効いててうまいから。
別れ際、施設へ歩き出す緑川さんの背中が広く大きく、俺はぼんやりと眺めつづけた。早い日暮れの夕日が彼の肩を差し髪を差し、オレンジ色に光らせている。
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ヅカ(プロフ) - レアノさん» レアノさ〜ん(;;)(;;) かなり自己満な小説なので皆さまがどうお思いになるか定かではありませんが、いつも通りいかせてもらうので是非見守ってやってくださいp(^-^)q まったり更新でがんばりま〜す！ コメントありがとうございました！ (2021年8月7日 22時) (
レス) id: b8ee486810 (このIDを非表示/違反報告)
レアノ - 御伽噺のようなお話の作り方が大好きです。マサキと夢主とヒロトのこれからがどうなるのか続きがとても楽しみです。更新応援してます。 (2021年7月24日 14時) (レス) id: a91aad1e54 (このIDを非表示/違反報告)
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