番外編、いち ページ10
朝、目を覚ますと、小さくなっていた。
もちもちの肌。小さい手、足。低い目線。ソプラノボイス。
……何で!?
私は、同室の二人に助けを求めた。
「きはちろ、おきて。たきも!」
「ん〜?もうちょっと…」
「すまない、A……。昨日のいけどんマラソンで疲れているのだ」
起きない二人にため息を吐いていると喜八郎が私の腕を引っ張り、布団の中に入れた。
抱き締められては動けない。
「あれぇ…、A、胸ちっさくなった?」
「うん。セクハラだからね?もー、おきてってばー」
喜八郎はすぐに猫のような大きな瞳を開き、私の姿に驚いているようだった。
「A?」
「うん。きはちろ、わたしだよ」
「そう……」
「どーすればいいのかな…」
本当に、何で小さくなったんだろう。
あっ、そうだ!
「わたし、かいけつさくおもいついたから、またね!」
私はそういって走り出した。
後ろから、喜八郎の驚く声が聞こえてきたけど、無視した。
向かった先はそう。
喜八郎が前に掘った落とし穴。
恐らく、誰かが落ちたであろう落とし穴に声をかける。
もちろん、呼ぶのはあの人。
別名不運大魔王の…
「いさくせんぱーい」
「あっ、A……!?」
「ふふ、ちいさくなっちゃいました」
「かわ…じゃなくて、ちょっと待っててね」
伊作先輩は格好よく落とし穴から出てきた。
……どうやったらここまで格好よく落とし穴から出てこれるんだろう。
「いさくせんぱい!どーすればいいんでしょうか?」
「ん、うーん。……待って。見つかったらややこしいな…」
何やら考え込んでしまった伊作先輩。
「A、これまでに誰かに言ったかい?」
「えっと、きはちろ!きはちろにいいました!」
「分かった。ねぇ、伊作お兄ちゃんって呼んで?」
「いさくおにいちゃん?」
小首を傾げると、伊作先輩はまた、不運にも落とし穴に落ちてしまった。
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年11月30日 7時