1.落とし穴 ページ3
「君、どうしたんだい？」
振り向くと、緑色の忍び装束を着ている男と同じ服装のサラサラストレートヘアーの男。
クソッ、サラサラストレートヘアー……だと？羨ましい。
私の髪は外にはねるからな。寝起きは大変だ。
「私、今日からこの学園に編入することとなりました。宮乃Aです。学園長室はどこでしょうか？」
ピシッと背筋を伸ばす。
私は身長が低いらしく、子供扱いされるため、なめられないようにしないと。
「あぁ、それなら案内してあげようか？」
「あ、ありがとうございます。お願いしてもよろしいですか？」
「うん。仙蔵もいいよね？」
「問題ない」
「本当にありがとうございます！」
そうして、歩き出した矢先、体が浮いた。
……否、足場がなくなったのだ。
「うぇええ！？」
ドスンッ！と音を立てて、尻餅をつく。
何なのこれ。
「だぁれ〜？僕の掘った落とし穴トシちゃん２０号に落ちたのは」
無表情だけど、少し楽しんでいるように見える彼は、この落とし穴を掘った張本人だろう。
「おいっ、喜八郎！落とし穴をこんなところに掘るんじゃない！」
ストレートヘアーの人が怒る。
私はその間に、何とかぬけ出した。
「ごめんねぇー」
棒読みの台詞に思わず目が細くなる。
というか、綺麗な顔だ。この落とし穴も上手かった。
「いえ、大丈夫です」
「そう？あっ、そういえば誰？君」
「宮乃。宮乃Aです。今日から忍術学園に編入することとなりました。また今度、会うことになったら落とし穴の掘り方教えてくださいませんか？」
「うーん。気が向いたらねぇ〜」
「はい」
それでもいい。
こっちから会いに行って教えてもらうんだから！
「綾部。印もちゃんと付けときなよ？」
「はぁい」
綾部喜八郎は踏鋤を抱えて去っていった。
「はは、ごめんね。あの子、悪い子ではないんだ。ただ、落とし穴を掘るのが好きなんだって。
……そういえば、名を名乗っていなかったね。僕は善法寺伊作。こっちは立花仙蔵だよ。六年生なんだ」
「なるほど」
そんなこんなで学園長室に着いた。
「ここだよ」
「ありがとうございました！」
「いえいえ」
「これからも何かあったら私たちを頼るといい」
立花仙蔵先輩が微笑む。
善法寺伊作先輩はそのようすに目を見張っていた。
かと思えば、すぐに人当たりの良さそうな笑顔に。
「じゃあまたね」
「はい」
頭を下げ、二人を見送った。
見えなくなると、私は失礼しますと言って中にはいった。
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作者名：もちもち | 作成日時：2019年11月30日 7時
