ゲタ吉とあーん ページ6
「…。」
「Aさん、無言であーんする人がどこにいると言うんです？」
「ここに。」と言いたい所だが、言ったら面倒な事になりそうなので黙っておく。
とても不満そうな顔をする彼に、私もまた怪訝な顔をした。
「絶対に言わなきゃダメ？」
「“あーん”と言ってこそ醍醐味なんですヨ？それを言わない人がありますか？君が言ってこそ癒しなんです！」
“あーん”について熱弁する彼に、食べさせるのは一緒なんだから言う必要があるのかと思う。
世のアベック達は、何故そんな面倒な事をするのか。
頭の中で議論しても仕方ないので、私は一口サイズに切ったパンケーキを刺して、彼に向けた。
「あ、あーん？」
「その嫌そうな顔さえ愛おしく感じてしまう…。これが、恋ってヤツ…！？」
「馬鹿な事言ってないで早く食べてくれる？腕が痛い。」
「はい…。…ん！美味いです！あ、止めないでちゃんと一枚食べさせてくださいヨ？“お願い”ですから！」
渋々私は、田中くんにあーんと言いながらパンケーキを一枚食べさせるという過酷な二つ目のお願いをやり遂げた。
とても満足そうな田中くんを横に、私は無駄な神経を使ってしまったと疲れ果てていた。
そんな私を知ってか知らずか、いつの間にか彼が、先程まで食べさせる為に使っていたフォークに、パンケーキを刺して此方に向けていた。
「…何？」
「ぼくも君にあーんしたいです！」
「それはお願いですか？」
「食べさせるくらい無償にしてくださいヨ〜…。」
また酷い酷いと嘆き悲しむ田中くんに、私は呆れて溜め息を一つ吐いて、渋々此方に向けられたパンケーキを食べた。
すると、先程まで泣いていた彼は
石の様に固まった彼を横目に、私はバターとメープルシロップの溶け込んだ甘いパンケーキを味わっていた。
ふと思い付き、フォークを取り返そうとしたが、田中くんは急に意識を取り戻し、フォークを持っている手を引っ込めた。
「返してよ。目的は果たせたでしょ？」
「だ、ダメです！ぼくあーんって言ってません！」
「それ重要？」
「絶対重要！」
そう言いながら、パンケーキを一口サイズに切ってフォークに刺し、此方に向けた。
「ハイ、あーん？」
期待する様な顔で待機している彼。
食べさせられる事に嫌気がさしたが、仕方なく口を開けパンケーキを食べる。
味はやっぱり美味しいが、先程からニヤニヤしている彼が憎たらしい。
パンケーキがなくなるまで、永遠とあーんは繰り返された。
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ミネ丸(プロフ) - ルーシュ1101さん» ルーシュ1101さん、読んでくださりありがとうございます！遅めの更新かもしれませんが、飽きずに待っていてくださると嬉しいです！ (2月21日 3時) (
レス) id: 8755400abf (このIDを非表示/違反報告)
ルーシュ1101(プロフ) - 最近〓くんにハマったばっかりなので〓くんの小説で更新されているものがあって凄く嬉しいです！！！これからも更新頑張ってください！！ (2月20日 18時) (レス) @page5 id: e241173cc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミネ丸 | 作成日時：2024年2月3日 4時
