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彼女 3 ページ3

彼は、溜まっていたものを気が済むまで吐き出したようだった。

現に、顔は落ち着き、スッキリしている。


しばらくすると、
おもむろに席を立ち、私の前に立った。

目線は、私ではなく床に止まっているが。


『……どうかしましたか?』


私が尋ねても、何も喋らない。

まるで、先程の私たちのようでおかしくなってきた。


「……貴方は、こんな暗いところに1人で住んでいるんですか?」

『えぇ、まぁ』


やっと喋ったかと思えば、そんなこと。

良くされる質問なので、なれているが。


当然のようにそう答えれば、彼は切羽詰ったように顔を上げた。

「僕のところに来てください!」


彼の目は、しっかりとこちらを向いている。

迷い無き目だ。最初に思ったが、私は彼のますっすぐな視線には、好感を持っている。


けれど、彼に答えることは出来ない。

拒否の意味を込めて、じっと目を見つめる。


「貴方は、こんな所勿体ないひとだ。
僕は、貴方といるとおかしくなるんです。

けれど、それと同時に、貴方を手放したくなくなる。」


会ったばかりで信用などないかもしれませんが…


段々と、彼の声は尻すぼみになる。

私は、窓から見える暗い外の世界に目を映すと、息を小さく吐いた。

『貴方が思っているほど、私はいい人ではありません。

それに、私は割とここを気に入っているんです。』


本当は、彼も分かっているはずだ。

私の身体は、太陽を嫌う。

心も体も、外に出たいなんて思わないのだ。


『それに、ひとり寂しくってわけでもないんですよ。
割と多くのお客さんが来てくれますし。』


そう言って彼の目を見つめると、
苦しそうに言葉を飲み込んだのがわかった。

そして、ふっと息を吐くと、

「僕は、あきらめが悪いですよ。」


ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべ、

また、来ます。

と、私の手の甲に口ずけた。



カランカランと、扉のベルが鳴り
次の時には、彼の姿は暗闇に紛れた。

アネモネ 1→←彼女 2



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ネイト - リクエストで「ジンと赤井さんの取り合い話の話」って出来ますでしょうか? (2019年9月10日 7時) (レス) id: 67fc31259c (このIDを非表示/違反報告)
ネイト - 初コメント失礼します!自分こういう内容の小説ドストライクに大好きなので滅茶苦茶嬉しいです!毎日読んじゃうくらいです!私ジン推しなのでジンが出て来て凄く嬉しいです!これからもずっっと応援しています!無理しない程度に頑張ってください! (2019年9月10日 7時) (レス) id: 67fc31259c (このIDを非表示/違反報告)
飛鷹琴葉(プロフ) - 『殺戮の天使』って知ってますか? セリフが似ていた気がするので、勘違いだったらすいません! (2016年10月20日 22時) (レス) id: 2893b59b0a (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ(プロフ) - 言い忘れてましたが、アルビノで差別を受けている人もいます、不謹慎だと思いませんかね? (2016年10月16日 13時) (レス) id: 564a3dbb91 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ(プロフ) - アルビノって目は赤くなるんですよ目には毛細血管いっぱいありますし、目が色素無いってのは可笑しいですよ、メラニンの生合成で色素が薄くて色素が薄すぎて毛細血管がたくさんある所では薄ピンクに見えたり赤く見えたりするんですよ (2016年10月16日 13時) (レス) id: 564a3dbb91 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:0.001 | 作成日時:2016年5月28日 21時

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