◆ ページ45
「…礼？」
繰り返すと、ヒロトはこちらに視線を投げつけてきた。一変して不機嫌そうな顔つきに、ヒロトが照れているということを察する。
しかしそんな顔をされてはこちらも困る。また目を逸らすヒロトに続くように、私もヒロトのパーカーに付いたロゴ辺りに視線を落とした。
「…お前が居たから」
そうしてヒロトが口を開くまでが、とても長い時間に感じられた。礼なんて言われて、私も私で緊張してしまっていたからだろう。
ヒロトはベッド際に座って視線を彼の足元に落としたままで居た。ヒロトの横顔には、いつもの青いイナズママークのフェイスペイントが刻まれている。
「お前が居たから、俺は今の俺になれた」
「…そんな」
「黙って聞いとけ、馬鹿」
私は言われるがまま口を閉じた。ヒロトが想像していたよりも大きなことを言ったので、つい声が出てしまったのだ。
「フットボールフロンティアに出たのだって、タツヤの説得だけが理由じゃねぇ。…お前の根気強さにだって負けちまった」
予選、そして決勝大会。努力と共に積み上げてきた、思い出や記憶が鮮明に目の前に浮かび上がる。
最初は、私達に敵意を剥き出しだったヒロト。タツヤも、私も、チームの皆も。目に移るもの全てを敵として見なすような、鋭い目付きは強烈だった。
「正直、すぐに音を上げて居なくなると思ってたんだけどよ。…お前、ほんと打たれ強えから」
呆れたような笑い声に、キュッと口を結んだ。目の奥がじんわりと熱くなって、ヒロトの姿が滲む。
「お前が居なかったら、世界に行けなかったかもしれねぇだろ。だから…」
ヒロトが私に顔を向けた。やっとこちらを向いてくれたのに、私はその瞳を見つめ返せなかった。
「…おい、泣くなよ」
「…ごめん…」
ヒロトの前では泣き顔を見せてばかりで、結局最後もこうなってしまったのが恥ずかしかった。
マットレスが軋んで、私の頭に覚えのある重みが乗る。その瞬間、堰を切ったように涙が溢れた。
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狩間篤花(プロフ) - narutokun0531さん» コメントありがとうございます。長い間私の作品を見てくださって本当にありがとうございます…！これからもお褒め頂けるよう精進して参ります(*^^*) (2019年5月6日 8時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - 初コメ失礼します。単眼のセレーネからずっと読んでます。シリアスと甘い恋愛を絶妙に書き分けられる作者様がとても羨ましいです。この小説も読んですぐに気に入ったのですっ！！応援してます、更新頑張って下さい！！ (2019年5月5日 12時) (レス) id: a9d6e0cd93 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 輝夜さん» はじめまして(* ´ ▽ ` *)一気読みしていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます(*^^*)お声に答えられるよう、出来るだけ早い更新を心がけたいと思います！ (2019年4月30日 17時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - はじめまして！夢主ちゃんもヒロトも可愛くて尊いです(´；ω；｀)最初から一気に読みました！これからも更新頑張ってください！！ (2019年4月28日 23時) (レス) id: ad533fb363 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 蓬莱山 輝夜＊さん» コメントありがとうございます。私も新シリーズを見てヒロト君に惹かれてしまった者です( ´-｀)更新頑張ります。 (2019年3月28日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2019年3月16日 6時
