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緊張の糸が切れ椅子の背もたれに全てを預けていると、ポケットの奥で携帯が揺れた。監督かと思い指を滑り込ませる。
何かを大事に包み込むように、両手でカバーに手を添えた。画面に表示された名前に笑みが零れる。
ヒロト【どーだ、ちゃんと選ばれたぜ？】
何故か偉そうな文面。彼が本当に日本代表なのだろうかと真偽の分かりきった疑いを掛けてしまう。
今からお披露目の為に急いでユニフォームに着替えなければならない筈だが、どうやらこんな重要性に欠けたメッセージを送ってくる余裕はあったらしい。
私が夜道で襲われた日を反省し、ヒロトと私もちゃんと連絡先を交換した。まさか最初のやり取りがこんなものになるとは思っていなかったけれど。
A【おめでとう。でもそんな呑気にしてる場合じゃないんだろ？】
ヒロト【なんだよ冷めてんな せっかく連絡してやったのに】
画面を暗転させようとすると、またメッセージ通知が点灯する。スマホを巧みに操るヒロトの姿が目に浮かんだ。
A【全国の人が見ているんだから、ユニフォーム前後ろ間違えたりするなよ？】
ヒロト【馬鹿か、そんなことするわけねーだろ】
単調な文字列が、確かにヒロトの声に乗って再生されてしまう。私は視線を上げて、今度こそ携帯をポケットに戻した。
暫くすれば、日本代表に選ばれた選手が目の前のステージに並ぶ。全国の精鋭達が勢揃いするのだ。
果たしてヒロトに、あの鮮やかな青色のユニフォームが似合うのだろうか。ユニフォームを着ると言うより、ユニフォームに着られてしまうのではないか。
対してタツヤは、代表のユニフォームだってきっと着こなして見せるのだろう。
いつもの爽やかさを一層際立てて、フィールドを駆け抜ける姿は容易に思い浮かべられる。
そんな私の勝手な評価なんて他所に、代表選手は堂々とした面持ちで入場してきた。
まるで、そのユニフォームが体の一部であるとでも言うように違和感無く、しかし誇りを持って日本代表のマークを胸に掲げている。
ヒロトもタツヤも、治先輩も例外ではなかった。想像よりずっと様になっていたし、格好よかった。
私は再度携帯を取り出し、彼らの姿を写真に収めた。後で必ず瞳子監督に送ろうと確かに思った筈だが、興奮は一旦そこで私の思考を止めた。
ただ、目の前のこの瞬間を目に焼き付けたかった。
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狩間篤花(プロフ) - narutokun0531さん» コメントありがとうございます。長い間私の作品を見てくださって本当にありがとうございます…！これからもお褒め頂けるよう精進して参ります(*^^*) (2019年5月6日 8時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - 初コメ失礼します。単眼のセレーネからずっと読んでます。シリアスと甘い恋愛を絶妙に書き分けられる作者様がとても羨ましいです。この小説も読んですぐに気に入ったのですっ！！応援してます、更新頑張って下さい！！ (2019年5月5日 12時) (レス) id: a9d6e0cd93 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 輝夜さん» はじめまして(* ´ ▽ ` *)一気読みしていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます(*^^*)お声に答えられるよう、出来るだけ早い更新を心がけたいと思います！ (2019年4月30日 17時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - はじめまして！夢主ちゃんもヒロトも可愛くて尊いです(´；ω；｀)最初から一気に読みました！これからも更新頑張ってください！！ (2019年4月28日 23時) (レス) id: ad533fb363 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 蓬莱山 輝夜＊さん» コメントありがとうございます。私も新シリーズを見てヒロト君に惹かれてしまった者です( ´-｀)更新頑張ります。 (2019年3月28日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2019年3月16日 6時
