◆ no side ページ32
ヒロトは自室でぼんやりと過ごしていた。頭に浮かぶのは、言わずもがなAのこと。
外はもうすっかり暗くなり、騒がしい蝉の合唱も聞こえない。冷房の機械音と冷風の流れる音だけが部屋の静けさを際立てていた。
Aはまだ帰ってきていない。多分、今日はお日さま園に戻ったのだろう。自分があんなことを言ったのだから仕方がないと思いながらも、やはり後悔していた。
タツヤとAの会話を聞いて、ヒロトは自分が孤独であることを再認識した。
信頼しているタツヤも、いつも側に居るAでさえ、ヒロト以上に大切な人が居て、温かな帰る場所がある。
サッカー部の部員になり、気にすることもなくなった現実を改めて突きつけられ、羨ましいのか悔しいのか、表現できない感情が溢れた。
その苛立ちに任せ、自主練習も勝手に放棄した。
一旦踏み留まって、待ってくれているAを迎えに行ったが、結果的に最悪の方向に進んでしまっている。
Aがヒロト以上にタツヤに信頼を置いていることは知り合った頃から知っていた。時折口にする"タツヤの為だ"という口癖にももう慣れてきている。
だからこそ、Aがヒロトと離れることをやんわりと拒んだあの瞬間は、かなり驚いたのだ。
ヒロトはてっきり、Aはタツヤ達の元へ帰りたがっていると思っていたから。少しだけ、嬉しかった。
ヒロトはベッドに全身を預け、きっと自分は大きく捉えすぎたのだと思いながら息を吐いた。
Aは案外子どもっぽいところを持っているから、一時の寂しさを口に出しただけだったのだろう。
それでいて正義感があって真面目だから、ヒロトが口にした突飛な提案にも頷いてくれたに違いない。
全部、自分が期待しているような感情の下で下された決断ではないのだ。
現に今、Aはタツヤのところに居る。もしかすると、このままお日さま園に帰ってしまうかもしれない。
もうそれでも良い。ただ元の状態に戻るだけだ。Aにとっても、それが一番なんだろう。
そうは思いながらも、この状況を拒む自分が居ることも確かだ。
「春咲居るか」
ヒロトは意を決してタツヤに電話した。必要以上の接点を持たないという約束の名残で、ヒロトは未だにAの連絡先を知らないのだ。
『え…そっちに帰ってないのか？』
「は？」
『いつも通りヒロトの家に帰ったんじゃないのか？』
「悪い、切るわ」
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狩間篤花(プロフ) - narutokun0531さん» コメントありがとうございます。長い間私の作品を見てくださって本当にありがとうございます…！これからもお褒め頂けるよう精進して参ります(*^^*) (2019年5月6日 8時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - 初コメ失礼します。単眼のセレーネからずっと読んでます。シリアスと甘い恋愛を絶妙に書き分けられる作者様がとても羨ましいです。この小説も読んですぐに気に入ったのですっ！！応援してます、更新頑張って下さい！！ (2019年5月5日 12時) (レス) id: a9d6e0cd93 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 輝夜さん» はじめまして(* ´ ▽ ` *)一気読みしていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます(*^^*)お声に答えられるよう、出来るだけ早い更新を心がけたいと思います！ (2019年4月30日 17時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - はじめまして！夢主ちゃんもヒロトも可愛くて尊いです(´；ω；｀)最初から一気に読みました！これからも更新頑張ってください！！ (2019年4月28日 23時) (レス) id: ad533fb363 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 蓬莱山 輝夜＊さん» コメントありがとうございます。私も新シリーズを見てヒロト君に惹かれてしまった者です( ´-｀)更新頑張ります。 (2019年3月28日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2019年3月16日 6時
