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時折ご飯の感想を伝えても、ヒロトはぶっきらぼうに相槌を打つだけだった。
けれど、今日のヒロトは私が夕飯を食べるのを肘を付きながら見ていた。食べ終わるまで、ポケットから顔を出す携帯に一度も触れなかった。
「ご馳走さまでした」
いつも通り完食する。陶器の底に描かれた柄が綺麗に浮かび上がっていた。心なしか、いつも以上に満ち足りた気分だった。
理由を挙げるとするなら考える必要は無い。私はずっと隣に居たヒロトに顔を向けた。
「ありがとう、ヒロト」
「何がだよ」
「
ヒロトの言い回しを借りて、そんな風に言ってみた。どう反応されるかと期待したが、ヒロトは鼻で笑って私を見る。
「…あぁ。手のかかる僕で困るぜ」
そうして、まだ濡れた私の髪をそっと撫でた。予想以上の反撃に一瞬息が出来なくなったような錯覚に陥る。
まただ。流石のタツヤに対してでも、こんなに体が強ばることはない。
だって、最初は乱暴で口の悪い、本物の不良だと思っていた。こんな優しい笑顔を浮かべる人だとは到底思えなかった。
サッカーという側面からしかヒロトを見ていなかった少し前の自分を恥じたい。ヒロトはこんなにも温かい人なのだ。
「さっさと乾かさねぇと今度は風邪引くぞ」
「…うん」
ヒロトの手が離れる。その瞬間またいつもの自分に戻った気がした。
スイッチか何かが、元の位置に戻ったような。
「…明日からは、ちゃんと自分の仕事を全うします」
「おう。頼むぜ、僕」
「…それで呼ぶのやめて」
ヒロトは面白そうにけらけらと笑う。
今でさえ下の名前で呼んでもらえないのに新しいあだ名が付いてしまった。これはもう、私の与えた権利が行使されることは無いも同然だ。
「…あ、私が運ぶよ」
私が立ち上がるよりも先に、笑っていたヒロトが目の前の完食済みの食器が乗ったプレートに手を伸ばした。
前までは私がやっていた事。ヒロトの不慣れな手つきが少しだけ危なっかしい。
「今日一日は甘えとけ」
「でもそれくらいは…」
「その代わり明日からは弱音吐かせねぇから」
ヒロトは両手でプレートを持ったまま言った。その上でカチャリと固く高い音が鳴る。
「俺の練習、ちゃんと付き合えよな」
そして今度は無邪気に、笑った。
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狩間篤花(プロフ) - narutokun0531さん» コメントありがとうございます。長い間私の作品を見てくださって本当にありがとうございます…！これからもお褒め頂けるよう精進して参ります(*^^*) (2019年5月6日 8時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - 初コメ失礼します。単眼のセレーネからずっと読んでます。シリアスと甘い恋愛を絶妙に書き分けられる作者様がとても羨ましいです。この小説も読んですぐに気に入ったのですっ！！応援してます、更新頑張って下さい！！ (2019年5月5日 12時) (レス) id: a9d6e0cd93 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 輝夜さん» はじめまして(* ´ ▽ ` *)一気読みしていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます(*^^*)お声に答えられるよう、出来るだけ早い更新を心がけたいと思います！ (2019年4月30日 17時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - はじめまして！夢主ちゃんもヒロトも可愛くて尊いです(´；ω；｀)最初から一気に読みました！これからも更新頑張ってください！！ (2019年4月28日 23時) (レス) id: ad533fb363 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 蓬莱山 輝夜＊さん» コメントありがとうございます。私も新シリーズを見てヒロト君に惹かれてしまった者です( ´-｀)更新頑張ります。 (2019年3月28日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2019年3月16日 6時
