◆ ページ3
昨日は少し夜更かししていた。部屋の暗さも相まって自然と瞼が落ちてくる。
うとうとしていると後頭部に柔らかい衝撃が走った。目を見開いたはずだが、視界は一層暗くなってしまう。
どうやらヒロトが先程のブランケットを私に投げつけてきたらしい。
ベッドが軋んで、すぐそこでフローリングに足を付く冷たい音がした。起きる気になってくれたのかと、ブランケットから頭を出す。
薄暗い部屋を歩くヒロトは、何故か既に上半裸だった。脱ぎ捨てた服はベッドの上にある。
「…配慮は無いの」
「勝手に入ってくんのはお前だろ」
「それでも、ヒロトが遅刻しないように手伝ってるじゃないか」
「俺は頼んでねぇよ」
高そうなタンスとクローゼットから服を引っ張り出す背中を見つめた。…今日はやけに素直だな。自分から着替えもするなんて。
ヒロトがズボンを脱ぎ出す前に目を逸らし、立ち上がった。ブランケットを畳んで軽くベッドを整える。
ヒロトのTシャツはベッド脇に掛けておけばお手伝いさんが持って行ってくれるだろう。
一ヶ月も続ければもう手慣れたもの。普通の家ではまず見ないであろう長さの遮光カーテンを開けるのも、最初は手間取ったが今なら難なくこなせる。
部屋に色が戻った。バルコニーに続くガラス張りの扉を少し開けると、裏山から退け反ってしまう程のセミの大合唱が耳をつんざいた。
「うるせぇから閉めとけよ」
「ごめん」
私はヒロトの声に従い扉の鍵をかけた。鮮やかな緑を目に収めてから振り返ると、練習着に着替えたヒロトが携帯から顔を上げる。
「…このノロマ、待たせんな」
悪態を吐いてからヒロトは部屋の扉を開けて出て行った。折角待っててくれたなら、最後まで待ってくれたら良いのに。
エアコンのリモコンを手に取り、ヒロトが家を出る頃には切れるようタイマーをセットする。私は早足でヒロトの背中を追った。
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狩間篤花(プロフ) - narutokun0531さん» コメントありがとうございます。長い間私の作品を見てくださって本当にありがとうございます…！これからもお褒め頂けるよう精進して参ります(*^^*) (2019年5月6日 8時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
narutokun0531(プロフ) - 初コメ失礼します。単眼のセレーネからずっと読んでます。シリアスと甘い恋愛を絶妙に書き分けられる作者様がとても羨ましいです。この小説も読んですぐに気に入ったのですっ！！応援してます、更新頑張って下さい！！ (2019年5月5日 12時) (レス) id: a9d6e0cd93 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 輝夜さん» はじめまして(* ´ ▽ ` *)一気読みしていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます(*^^*)お声に答えられるよう、出来るだけ早い更新を心がけたいと思います！ (2019年4月30日 17時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - はじめまして！夢主ちゃんもヒロトも可愛くて尊いです(´；ω；｀)最初から一気に読みました！これからも更新頑張ってください！！ (2019年4月28日 23時) (レス) id: ad533fb363 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 蓬莱山 輝夜＊さん» コメントありがとうございます。私も新シリーズを見てヒロト君に惹かれてしまった者です( ´-｀)更新頑張ります。 (2019年3月28日 11時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2019年3月16日 6時
