稲妻系アイドル。２【イナゴ】 (ページ8)

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『だって君、京介の彼女なんじゃないの……？』

そんな言葉がフリーズしたあたしの頭の中でグルグルと回っている。

あたしが剣城君の彼女とか絶対あり得ないって！
あ、でも、そう言ったら水鳥羨ましがるだろうなぁ……ってんなわけ無い！！

何故にそう思ったんですか、剣城君のお兄さん！！

「……に、兄さん……？」

「ん？どうした？」

剣城君はびっくりして声がうわずりながらも、剣城君のお兄さんに話しかける。

「さっき、彼女とかなんとか言ってたよな……？」

「うん、そうだよ？」

「それ、本気で言ってる……？」

「だって、そうなんでしょ？」

「なんでそうなんだよ！？」

クールな剣城君の柄に似合わず、
剣城君はガタンッ！と大きな音を立てながらベンチから立ち上がる。

するとその大きな音に、
中庭にいた人たちが一斉にこっちの方に目を向けてきた。

その視線に気づいたのかハッとして、少し顔を赤くさせながら、
今度は音を立てずにベンチに座った。

そして、帽子を深く被り直す。
まぁ、こんなとこでアイドルがいるなんてバレたらヤバイもんね。

「……いや、だからさ、何故にそう思うんだよ？」

「んー、京介有名人だからさ、そんな京介の隣にいるから、
彼女かなーって思って……」

「……兄さん……」

「ハァ……」と頭を抱えて深いため息をつく剣城君。
……剣城君。何と言うか、ため息をつくその気持ち、分かるよ……。

剣城君のお兄さん、『有名人＝彼女がいる』って方程式を勝手に作らないでください……。

と、心の中で強く思った。

「ところで、君の名前は？」

「えっと……宮嶋A、です」

「Aちゃんか……。君に似合ってる名前だね」

「い、いや、そんな事は無いですよっ……」

ちょっとくさい台詞を難なく言いながら、あたしに笑顔を見せる。

剣城君とは違う雰囲気だけれど、
それでも、お兄さんも剣城君もとてもかっこいいのには変わりは無い。
美形兄弟、って感じかな。

思わずあたしは照れてしまった。

「あ、俺は剣城優一。
分かると思うけど、京介の兄だよ。ちょっとした知り合いって事でよろしくね」

「よろしくお願いします……！」

剣城君のお兄さん――優一さんが握手を求めてきたので、
あたしも手を出して握手を交わした。

優一さんの手はとても男らしかった。