稲妻系アイドル。２【イナゴ】 (ページ12)

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驚いた。
それしか、言いようが無かった。

あの剣城君が、兄さん想いな男の子が、
自分の兄の足を動かなくした、なんて……。

「うっ、嘘でしょ？」

「嘘じゃないですよ」

動揺しながら聞いてみたものの、
剣城君は感情も無い声で答えを返された。

せっかく、
さっき水を飲んだのに、どんどん口の中が乾いて行く。

「でも、さ、剣城君は優一さんの事、好きだよね？」

「はい、兄として好きですし尊敬もしています」

「フッ」と柔らかく微笑みながらそう言う剣城君。
そうだよね、剣城君が優一さんの事嫌ってるわけ無いもん。

私は何だか、ホッとした。

しかし、すぐに真顔になって「けど」と剣城君は一言発した。

「その気持ちが裏目に出たんです」

「えっ？」

「俺が小さい頃、兄さんも俺もサッカーが大好きで、よく好きなサッカー選手の真似をして遊んでいたんです。
でもある日、ボールが木に引っ掛かっちゃって俺が木に登ったんですが……。
そうしたのがダメでした。
木が折れて落ちてしまった俺を兄さんは庇って、それで足を……っ」

「そんな……」

想像以上に悲しい話で、思わず絶句してしまった。
あんな仲良しな兄弟が、あんな悲惨な事故に巻き込まれていたとは……。

だから、剣城君は負い目を感じているの？
自分のせいで優一さんの足が動かなくなってしまったと思っているの？
だからそのために――。

「……剣城君って、すごいね」

「はい？」

気付いた時には口が動いていた。

「あんな悲しい出来事があったのに、ちゃんと前に進んでいるし。
優一さんのために今、アイドルやっているんでしょ？
それってすごい事だと思うけど……」

にしても、なんか人を褒めるって恥ずかしいかも……。

と、あたしが一人で勝手に頬を赤く染めていると剣城君がまた微笑みながら、
「ありがとうございます」そう言ってくれたから、またもどかしい気持ちになった。

何だか、良い雰囲気になった時、
どこからかそのムードをぶち壊すような雄叫びが聞こえてきた。

「つぅぅぅうるぅぅぅぅぅぎぃぃぃいいいい！！」

「え、何この声……」

「……まさか」

剣城君が苦い顔をしながら、玄関の方を向くので、
あたしもつられてそっちを見てみた。

するとそこには……。

「会いたかったぞおおおおおおおぉぉおおっ！！」

「は、白竜……！？」

「誰ッ！？」

こっちへと走っている謎の少年がいた。