素直になれば良いのに (ページ10)

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Seventh result ページ10

［Forget‐me‐not］

熱を含んだ風が吹く初夏、私は図書館でボーっと調べ物をしていた

「進藤さん何を読んでいるのだ？」

呑気な声がする

「植物図鑑で調べ物中なだけ。ねぇ、この花を送ってくれたのは東堂君かな？」

隣に座りページを開く東堂君に机の上の花を見せる

「ふむ、勿忘草だな…意味は…『私を忘れないで』だ。よっぽど、お前を思っているという事だな送り主は…」

忘れないでと、見ず知らずの誰かに言われたとしても

興味ないよ…言われたい相手は、いつだって頼らないで先に一人で行ってしまうんだから

「東堂君はなに読んでるの？」

「源氏物語で葵の上が亡くなるシーンだな…」

「うわぁ聞きたくないかも…女の情念が篭った話しでしょソレ？」

図鑑を閉じて東堂君の読む源氏物語を覗く

「あぁ。だがな、最期の最期、葵の上は源氏を愛していたと俺は信じたい…そうじゃなきゃ」

「「救いようがない」」

ハモってしまった

顔を見合わせお互いにクスクス笑う

「本当に面白い子なのだよ進藤さんは！」

「東堂君だって十分面白いよ？」

「なぁ進藤さん…名前で読んでも構わないだろうか？」

うっすら、目を細め頬に下がって来た髪を直しながら東堂君がいう

「君と親しくなりたいんだ…ダメかね？」

本の話しが出来る友達が増えることは私にも好ましい事で断わる理由が無かった

初夏の夕暮れ、重なる影と楽しげな声が寮への帰路まで続いた