素直になれば良いのに (ページ13)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:23,946 hit

Ninth result ページ13

［Marvel-of-peru］

衣替えも近くなって秋を感じるような風向きに心が躍る

木蔭で読む本には、魔法が掛けられているような気がする

「あっと言う間なんだもん…」

「何がだ？」

正面に寿一が立っていた

「授業始まっても来ないから、迎えに来た」

屈んで手を伸ばし、私を立たせるとスカートの土を払う

「いつもごめんね…寿一…」

シュンとする私を慰める為か分からないけど、頬っぺたと耳にゴツゴツした寿一の手を感じた

無口なまま、二人で教室に向かう

「ありがとね」
・
・
・
・
・
図書委員の活動終わり、いつものように東堂君がやって来た

「Aさん、どうしたのだ？新しい髪飾りなどして…」

カウンターで貸し出し手続きをしながら、髪に触れる

髪から落ちたのは、オシロイ花だった

「つけてくれたみたい、幼馴染みが…」

「ほぅ！勿忘草に白粉花と来たか！」

「同じとは限らないでしょ？」

「そ、それもそうだな…同じだけはあってはならんのだよ！」

机を拳で叩く

「なんで？」

素朴な疑問点を東堂君に聞く

「白粉花は【内気・告げる事の出来ぬ想い】だから…だ」

彼の細い声が、妙に耳に残る…でも、チラリと思い出すのは寿一の横顔だった

「そっか…」

寿一なに言いたかったんだろ…貸し出し手続きを終え、パソコンの電源を切る

「今晩、俺に時間を割いて欲しい」

私の手を握った東堂君は目に涙を溜めていた

「お願いだ…」

熱っぽい眼差しに狼狽えるしか無い私はついうっかり

頷いた。

「では、22:30女子寮の非常口で待っていてくれ。合言葉は夏目漱石だ」

手を離し図書室を出て行く東堂君はどこか嬉しそうだった

「何か良いことあったのかな？」