EP 44 In ページ45
声を出しちゃいけない、バレたらダメ
そう思って息を殺して、ただただその光景を見ていた。
けど、どうしても耐えられなくて、その場に座り込んでしまった。
『っ、!』
ズサッ、という音が聞こえたのか、大ちゃんが一瞬こっちを見て、びっくりした顔をした。
それは本当に一瞬で、数秒後にはもう佐藤さんの方に向き直して、
『行こう、さと……リサ』
そう言いながら大ちゃんは佐藤さんの手を取って、俺がいるところとは別の方向に足早に歩いていった。
「…」
なんで?
なんで、"リサ"なんて呼び捨てしてるの?
大ちゃん、今まで女の子に対して呼び捨てするなんて一度もなかった。
俺ですら…慧って呼ばれたことなかったのに、
「はは…そこじゃないだろ、俺……」
渇いた声で笑って、自分の思考に突っ込む。
「……」
さっきの何秒かで、何もかもが馬鹿らしくなった。
大ちゃんと佐藤さんが遊ぶのを止めようとしたのも、大ちゃんと向き合って話そうとしたのも、…大ちゃんを好きでいることも。
馬鹿馬鹿しい、そう考えれば考えるほど視界ははっきりせず、何も見えないくらいにぼやけていく。
目からこぼれた涙はポタポタと地面に落ちて、たくさんのシミを作っていった。
「…」
なんだろう。
さっきキスしてるところ、間近で見たのに
衝撃的すぎたのか、呼び捨てしていたことの方が気になってしまった。
普通なら、呼び捨てよりキスしてることの方が刺さるはずなのに
「俺、ちょー変じゃん…」
自虐するかのように呟いた。
その時、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえて、振り返ってみると、そこには光がいた。
八「いのちゃん…?」
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IAY(プロフ) - yuriaさん» うわあ、ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!近々続き出そうと思っているので、ぜひ読んでください!(^^*) (2019年10月26日 16時) (レス) id: 5a1cb53f9c (このIDを非表示/違反報告)
yuria(プロフ) - この作品凄く続きが気になります!これからも頑張って下さい!応援してます! (2019年10月26日 2時) (レス) id: 30859cc1ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麗逢 | 作成日時:2019年9月24日 19時