ソードアート・オンライン【桐ヶ谷和人】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:23,826 hit

▼夢のまた夢ページ4

そもそも、私がSAOを知ったのは、

他でもない、和人の話題からだ。

加えて和人が居ないときも、病院の広場に置かれた42インチの大型テレビから、

毎日のようにニュースに取り上げられていたためでもある。

和人がこれほどまでに夢中になり愛した世界を、私も一度見てみたい。

そう思い始めたのは、決して遅くはなかった。

低く響く鳥達の声。

鼻先をくすぐる植物の匂い。

肌をかすめる優しい風。

現実世界より、現実めいている。

そう彼は言った。

一度でも良い……

この目で見て、この身体で感じたい。

和人と同じ世界を。

だが、それは夢のまた夢。

今のAの身体は、歩くことすら困難なのだ。

ナーヴギアを被り、脳に何らかの障害が起こっては御免だ。

今のAには、ナーヴギアを被る事は許されなかった。

和人と、もっと話がしたい。

和人と、その世界で壮大な草原を走り回りたい。

和人と共に生きたい……

たったこの夢すら、Aにとっては水泡に帰すにも等しい望みだった。

この辛さが、誰に分かるだろうか。

考えただけで、胸の奥がきゅーっと苦しくなる。

「和人……和人に会いたい……」

そんな言葉を、今までどれだけ呟いただろう。

誰が聞いてくれるわけでも、

叶えてくれるわけでもないのに。

胸の苦しさに、胸元を両手で強く抑えつける。

蒼色の大きな瞳は、いつにも増して弱々しく潤み、

花色の唇はくいと歪む。

すると、スライド式の扉が物音一つ立てずに開く。

「気分はどうだい。A」

・・・・