ソードアート・オンライン【桐ヶ谷和人】 (ページ1)

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▼プロローグページ1

ここは、病院の個室。

いくつかベッドが規則正しく並べられているが、

この病室には彼女一人しか居ない。

彼女の隣には、黒いコートを着た少年が座っている。

少年は彼女の頬、そして髪を撫でた。

「Aの病気が治ったら、どこに行こうか」

少年は目をキラキラとさせて続けた。

「Aと行きたい所は山ほどあるんだ。

遊園地、キャンプ、公園、

あ、最近公開した映画も観たいんだよな」

少年は彼女に向き直り、優しく手を握った。

「また一緒に、いろんな所に行こう」

彼女は頷いた。

彼女もまた、少年の頬を優しく撫でた。

「ありがとう、和人」

か弱くもたっぷりの愛情が詰まった声色。

少年にはそれが解る。

少年の名を口に出しただけで、今すぐにでも抱きしめたくなる。

ただ、今は駄目だ。

今だけは………

少年は彼女の両腕をゆっくりと倒し、

起きていた彼女の身体を寝かせた。

少年は軽く椅子から立ち上がり、

小さく音を立てて彼女の額にキスをした。

「じゃあ、そろそろ帰るよ。

また来るから」

そう言うと、踵を返して病室を出て行った。

病室はとうとう彼女一人になった。

扉がピシャリと閉まった途端、

こらえていた熱い涙が、

彼女の目尻から溢れてこぼれ落ちる。

「帰るなんて嘘。

和人、あなたはまた行くんでしょう？

アスナっていう、私が知る筈ない

彼女のもとに」

そんな皮肉のこもった独り言は、

少年に届くこと無く

虚しく部屋に消えていった。

・・・・・