🦁―荒野の反逆者。 ページ38
AShift
「……それは、許可出来ないよ。」
真っ直ぐ僕を見つめるリドル。
何故？せっかく犯人が分かったというのに。
あともうひと踏ん張りというところなのに、リドルは駄目だと言うんだろう。
「怪我をしてしまえば、今年のマジフト大会にAも出場出来なくなるかもしれないんだよ。
君がマジフト大会が好きかどうかは知らないけど、少なくとも努力はしてきたんだろう？ハーツラビュル寮のために。
それなのに、そんな犯人のためだけにAを犠牲にするなんて、僕は嫌だ。」
『ですが、リドル、』
僕がリドルに喋りかけようとしたのと同時に……いや、わざと被せるように、
「Aが怪我する位なら、欠場したほうがマシだ。」
リドルは言い放った。
『！？』
「Aと一緒にマジフト大会に出場出来ないなんて、僕は絶対に嫌だよ。君が良くても僕が嫌なんだ。
……ただでさえ他の生徒達よりAと一緒にいる時間が少ないのに……。
これ以上Aと一緒にいる時間を減らしたくないんだ。」
『リドル…。』
リドルの言いたい事も分かる。でも、僕が出る出ないよりも、犯人を突き止める方が大事なんだ。僕の変わりなんていくらでもいる。それに、
『僕が出たって、何も変わりませんよ。』
お願いだから、今の僕が出来る精一杯の事をやらせてくれ。
「……僕は、Aがマジフト大会に出場する事の方が大事だと思うよ。」
『……え？』
「もちろん、犯人を突き止めるのも大事だ。でも、それだけのことでAの努力が台無しになるのはもっと嫌だ。
君は自分の事を低評価し過ぎなんだ。」
『ですが……。僕はこれ以上怪我人が出てほしくないんです。』
「それは僕達も同じだ。
怪我人が出てほしくないのは僕も同じ。だからAには怪我をしてほしくない。」
『……でも、犯人を突き止めないと、』
「それ以上反発するなら、首をはねてしまうよ。」
『……なんで、僕をそんなに高評価するんですか。何も出来ない役立たずの馬鹿なのに。いてもいなくても変わらないのに。皆の足を引っ張っているだけの役立たずなのに。
なのに、何故？』
「…君は、僕の友達、だから。」
『…え…？』
「…いつも僕と一緒にいてくれるし…その、えっと………好き、だから…。怪我をして欲しくないんだ……。」
『リドル…？……っぷ！あは、あははは！』
なんだ、嫌われて無かったんだ、僕。
『僕も、大好きですよ、リドル。』
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作者名：日菜 | 作成日時：2022年9月12日 13時
