Hooked (ページ40)

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「はじめまして
山田くんと同じクラスの
白石です」

綺麗な黒髪のショートボブに
ぱっちりとした瞳
白い肌に赤い唇が映えている

噂の白石先輩は実際会ってみると
とても綺麗やった

まるで、今からでもモデルになれそうなくらい

『…名取です』

白石「単刀直入に聞くんやけど」

『はい』

白石「山田くんと仲ええん？付き合っとるん？」

その質問は思っていたよりも単純で答えやすかった
事実を答えれば良いだけで
私の気持ちは求められてないのだから

『別に付き合ってません
仲はそれなりに良い思いますけど』

『ただの先輩後輩です』

そう、勉強を教えて貰ってる後輩と
勉強を教えてる先輩、それだけの関係だ

白石「本当に？」

白石先輩は未だに疑うような目線を
こちらに向ける

『そうですよ』

ホッとした様に表情で白石先輩はそう言うと
もう1ついい？と続けた

白石「名取さんは山田くんの事
好きじゃない、よね？」

懇願する様な白石先輩の声と
好きじゃないよね？というフレーズが
嫌に耳に残ってずっと響く

白石「ほら、今のでわかったと思うんやけど
私、山田くんの事好きで
名取さん相手やと勝ち目ゼロじゃん」

女優で良かった
私生活でそう感じたのは久しぶりだった

表情を顔に出す事なく、上手く嘘をつける

『好きじゃないですよ』

髪の毛に耳をかけながらそう言うと
白石先輩はさっきの倍くらい安心したような表情を見せた

『仕事の事もあるんで恋人なんて作れませんよ』

『台本覚えるのとか、勉強に追いつくので毎日忙しいし
彼氏作る暇なんて無いです』

『いつどこから情報が漏れるか分からないので
彼氏つくっちゃダメって言われてますし』

自分に言い聞かせるように
そして、1mmも顔に行動に出さぬ様に注意して
言葉を口にする

彼氏ができたら
もしバレた時に作品に影響が出て
お蔵入りするかもしれないじゃないか
そうしたら、スタッフや他の俳優さんに迷惑がかかる
それに私と一緒に週刊誌に載った事で
個人情報も漏れたら大変な事になる

ずっと日向ちゃんが言ってるじゃないか
恋愛は辞めなさい、関係者や共演者に迷惑が掛かる、って
何より、相手が可哀想でしょうって毎回言ってる

この感情は蓋をしなきゃダメだ

白石「そっか、ごめんね
わざわざ変なこと聞いて」

『いえ、気にしないで下さい』

それから白石先輩はお礼を言って足早に去っていった