犬猿の仲・４ ページ9
「あとから聞いてショックでしたよ。俺が見たのは囮捜査で、所轄の婦人警官がアイツに脅されて無理やり囮になってたんです。
その婦人警官はコネシマの恫喝と犯人の暴行によって精神を病んで辞めたそうです。」
淡々とそう告げるショッピに武藤は眉を上げた。
「え、そうなの？」
「心がないんや。そのくせ犯人逮捕には異常なまでに固執する。イカれてるんです。」
「そっか、そんなことがあったんだ。」
武藤はそれほど気にする様子もなく、ぼけっと窓の外を見た。
武藤の頭の中にあるのはショッピへの共感ではなく、父の骨壺の前でうずくまる幼いAだった。
「じゃあAちゃんとコネシマくんはぴったりだね。」
「は？」
「え？」
「いや、それ…」
「あ、ほらAちゃんもイカれてるし。」
「いや、Aちゃんて…」
ショッピの困惑しきった表情を見て、武藤は初めて自分の間違いに気づいた。
「ああああ！ほら、ね！蓮水くん！蓮水くんってAちゃんって言うんだよってショッピくんに教えてあげようと思ってさ！あはははは！」
「はあ。知ってますけど。俺そう呼んでますし。」
時すでに遅し。
武藤はショッピからの訝しげな視線に丸３日耐えることになる。
ーーーー
「このドレス、丈はぴったりだけど胸がキツいわね。」
ぎゅうぎゅうと胸を中心のやわらかなレースの部分へ押し込めているA。
そのカーテンを挟んだ向こう側で、コネシマは顔を赤らめて待っていた。
「おい、いつまで選んどんねん。あと２時間で出港やぞ。」
「だって、相手は金持ちで女にモテてセンスもいいんでしょう？ちゃんと着飾らなきゃ相手にされないわよ。」
小気味良い音を立てて試着室から出て、「次はこれね」とネイビーのドレスを持っていくAの手をガシリと掴み、コネシマはある一着を持たせた。
「これ着てさっさと出ろ。
そこのスタッフ、ピアス取ってくれ。それちゃう、その右の長くてデカいやつ。それや、すまんな。」
コネシマはショップスタッフに大振りの輝くクリスタルのピアスを持って来させるとAに押し付ける。
口を尖らせながらもAは渡されたものを身につけた。
それは黒いノースリーブのイブニングドレスで、背中はくびれの位置に届かないくらいまで大きく開き、前はラウンドネックだが薄く肌が透けている。
そしてバストを覆うように胸元から腰回りにかけて黒と白、そしてメタリックな銀レースが繊細な花模様となって咲き乱れている。
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作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
