犬猿の仲・３ ページ8
Aのバディであるショッピと、上司である武藤や課長や管理官の顔を順番に思い出しながら、「まあ絶対上司だろうな」と結論づけ再び証拠品に目を向ける。
男所帯で仕事をする女同士、また同じ年に入庁した同期として捜査一課配属になってからAと鑑識の淡島りりかは親しくしている。
恐ろしく美人だが負けず嫌いなAは各所に敵が少なくない。
しかし現場で男のショッピや上司であるはずの武藤を従えてバリバリ意見を言うAを見てりりかは好感をもったのだった。
泥や埃にまみれながらもりりかに証拠品を届けにやってくるAを尊敬していた。
それゆえにりりかは誰よりもAのことを心配している。
Aからしたら英国帰りで優秀だが、警察組織に色濃い上下関係の感覚を理解できないりりかも大分際どく見えているのだが。
ずっとそのままでいてね、A。
黒ずんでしまわないで、ずっときれいな
「あーAってばわたしのこと大好き。あーこれはアレですかねえ。20時までに帰してくれなかったらA鑑識のこと嫌いになるかもなあー。」
わざとらしく大声でそう言い、ザワつく男たちを横目で見てはニヤつく唇をりりかは隠そうともしない。
機嫌良く鼻歌をうたうりりかを周りの男たちは恨めしそうに見つめた。
Aとは別件の捜査に出ているショッピは何回目かわからない怒りを運転席の扉に叩きつけた。
「クッソ、ほんま腹立つ。」
同じく助手席の武藤も何回目かわからない溜息をつく。
「ショッピくんもそうやっていつまでも不貞腐れてないでさ、切り替えよ、切り替え。」
「よりによってなんでコネシマなんや。Aさんの身に何かあったら、俺は、俺は…。」
いつものクールさが見る影もないショッピに、もうすっかり見慣れてしまった武藤は薄い感情のまま尋ねる。
「なんで君そんなコネシマくんだけ毛嫌いしてるの？いや、たしかに悪い噂は聞くよ？でもそんなに敵視しなくたってもよくない？
仲良さげだったって言ってもさ、蓮水くんだって仕事で関係つくってるだけなんだから。」
ギロリと武藤を睨んだショッピはたたみかけるように言葉を吐く。
「コネシマは危険です。他人の命すら惜しまず犯人逮捕のことだけ考えています。昔、コネシマが連続通り魔犯を現行犯逮捕した現場に所轄の俺はたまたま居合わせて、アホなことにコネシマに憧れて一課に入りました。」
「ええそうなの！？マジで？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
