脈打つ箱 ページ43
「…ちゃん…Aちゃん！」
「え、ああ、なあに？」
ムっとしているまどかと目が合うと右手に持っていたフォークを持ち直す。
「どうせ仕事のこと考えてたんでしょ。」
「んー…ちょっと、ね。」
Aは笑って誤魔化す。
週末、武藤家に泊まるAはまどかに誘われてスイーツ食べ放題に来ていた。
しかし艶めくフルーツタルトを目の前にしても、なお昨晩のショックから抜け出せずにいた。
仕事に関しては信頼していた葛宮が裏でグルッペンと繋がりを持っていたことだけではない。
今思えばコネシマの様子もおかしかったような気がする。
狂犬コネシマが、ただ大人しくじっとしているなんてことがあるだろうか。
出てきた管理官に直撃や、座敷に突入してでも現場を抑えるのがコネシマではないか。
「ま、別にいいんだけど。父さんもAちゃんも休みの日まで怖い顔しないでよ。…せっかく気晴らしになると思って連れてきたのに。」
店を出るとき小さく呟かれたまどかの本音を聞いたAは、まどかをぎゅっと抱きしめた。
「今日の夜ごはん、一緒に餃子包もう。」
「え、やった！やるやる！久しぶりじゃん！」
甘いものを食べたばかりにも関わらず、まどかは嬉しそうにはしゃいだ。
武藤家でまどかと作ったご飯を食べ、武藤親子の軽快なやり取りをみて笑う。
武藤には反抗的だが、Aには甘えがちな思春期のまどかがかわいい。
「まどかちゃん、大きくなりましたね。」
「まあ、Aちゃんがうちを出てけっこう経つしね。まどかも高校に上がって…交友関係も、広がったみたいだし、うん…。」
影を背負った武藤パパに、なんとなく察したAは苦笑いをする。
「いい恋愛を経験するのは大事なことでしょ。」
「わかっちゃいるって！パパは複雑なの！！」
「将来変な男にひっかかるよりいいじゃない。」
「それAちゃんに言われたくないよ！変態テロリストに変態後輩！ヤバいのにばっかり絡まれてさ！」
「ちょっと、変態後輩ってなに？まさかショッピのこと？」
「あーあー今のナシ！えっとー…あ、コネシマくん！コネシマくんとはどうなの？」
「どうって、別に何にも。」
「ほら、バディになってみて知らなかった一面が、とか意外な共通点が、とかないの？」
Aはざっと今までのコネシマの数々のボケっぷりと問題発言を振り返る。
そして思い当たることを迷いながらも口にした。
「そういえば、コネシマさんもご両親が早くに亡くなったって。」
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作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
