復讐・４ ページ42
「誰やそれ。」
「公安の人間よ。でもどうして、葛宮まで……。」
葛宮尊とAは同じ大学の先後輩である。
Aの一課配属と同時期に公安に配属され、A相手に俺が日本の守護者になると大口を叩いていた。
「だとすると奴と国家権力は相当ズブズブやな。」
コネシマが大きく舌打ちをする。
「私行くわ。うまくやれば話の内容を…。」
「馬鹿やめろ。グルッペンと鉢合わせたら今度こそオマエは何されるかわかんねえんだぞ。」
「でも！」
「落ち着けA。奴と繋がってる内部の人間がわかれば十分や。」
そう言ったコネシマの瞳はひどく優しげで、Aは勇んでドアに手をかけたままの右手を戻した。
張り込みを続けていると、黒塗りの車が店の門の前に着く。
暖簾をかき分けて出た管理官が足早に車に乗り込み去って行った。
そこからさらに数十分後に葛宮がひとり出てくると、Aはいてもたってもいられずコネシマの制止を振り切り葛宮の前に立ち塞がった。
「な…！なぜAがこんなところにいるんだ！まずい…ちょっとこっちに来い！」
「黙って私の質問にだけ答えて。なぜ犯罪者と密会を？これは日本への裏切りに他ならない。答えなさい。」
「大きな声で騒ぐな！奴らがすぐに出てくる！」
Aと葛宮が揉み合っていると、運転席から出てきたコネシマがAと葛宮を後部座席に押し込んだ。
すぐに発進させ人気のないトンネル内に停車をすると、コネシマの怒号が車内に響く。
Aはコネシマを意に介さず葛宮を睨み続ける。
「ティターニア号のことは当然我々の耳にも入っているが、奴らについてはこちらも精密に調整をして進めている。くれぐれも我々の邪魔をするな。」
「奴らは公安の監視下にあるってことか。」
「ああそうだ。」
「殺人鬼とグルなんて、見損なったわ葛宮。」
「これ以上おまえらに話すことはない。…コネシマ警部補、この生意気な女に目上の人間への口の利き方をよく教えておくんだな。」
「その生意気な女に熱を上げてたのはどこの誰かしら。」
「……昔の話だ！ッ用はない、俺は帰るぞ！」
葛宮はスッと目を細めたAに見つめられると、耳を赤くして乱暴にドアを開け放ち去って行った。
「信じられない、あの葛宮先輩が。」
「…欲しい情報は掴めた。俺たちも帰るぞ。」
コネシマは異常なまでに落ち着つき払った様子だが、葛宮に意識が向いているAがそれに気づくことはない。
そして夜は明けた。
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作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
