逃走 ページ28
思い切り食らったトントンは顔をおさえて後ずさる。
「ってぇ…まだ動けんのかい。」
今だと身を捩ろうとすれば、動かなかったAの身体に力が戻った。
素早く体を奮起させ体を起こした勢いのままグルッペンの手を蹴り上げその手に握られていた銃を弾き飛ばす。
「コネシマさん！」
バスローブを引っつかみ、足をもつれさせながらコネシマに駆け寄り腕を掴んで立ち上がらせ、さらにうずくまっていたトントンを体術で拘束する。
「Aなかなかええ動きするやん、助かった。」
「…薬が抜けたか。まずいな分が悪すぎる。おいトン氏作戦変更、二人で逃げるぞ。」
「初めから…そう言っとるわ。」
そうは言ってもトントンはAに絞められ、グルッペンはコネシマに拳銃を向けられている。
攻勢逆転、あとは応援を待つだけとAは安堵した。
「行き先は全員で留置所よ。鉄柵越しにたくさんお話しましょう。」
しかしグルッペンは薄く笑みを浮かべながら少し思案すると、衝撃的な発言をする。
「残念だが、俺は証拠不十分で釈放。まあ良いところまでいって不起訴だ。警察上層部にはオトモダチも多いのでな。」
「は？何を言って…。」
信じられないとAは驚愕の表情を浮かべるが、続くコネシマの発言に息が止まった。
「やはりな。そうと決まればお前ら、ここは逃してやるよ。」
そう言って銃を下ろしたコネシマに、Aはすかさず言葉を投げかける。
「どういうこと？」
「俺はな、ずっと前から上層部の黒いつながりを調べとった。やっとや、やっとオマエらという糸口を掴んだ。俺はオマエらを駒として生かし、上の悪い人間に正当な裁きを下す。
そういうことやA、そのデブ離せ。」
「待って、何を言ってるの。こいつらは連続殺人犯と協力者よ。ここで逃すわけには…。」
「警察にしては良い鼻の犬だな。名前は？」
「コネシマや。」
「コネシマ刑事。君とは気が合いそうだ。どうだ、俺と協力しないか。」
「協力はせえへん。法を犯す連中なんかとはな。ただ利用するだけや。」
「ハッ殊勝な心掛けだな。さて、女性に優しいトントンくん起きたまえ。」
呆然としているAはあっさりとトントンに形勢逆転される。トントンはAをコネシマに引き渡すと、赤い顔のままグルッペンに向き直った。
「ぺらぺらしゃべりやがって！説教はあとや、デッキに逃走準備がある。行くぞ！」
水字幕)に羽交締めにされたAは、混乱しながらも大声で叫んだ。
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作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
