十三匹 ページ13
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「Aさんは芸妓だと聞きましたが、何がお上手なんでしょう?」
「ええと、芸事は一通り仕込まれましたが、一番得意なのはやっぱり本業の三味線です」
「へぇ、是非聴いてみたいです。ねぇ、しん様?」
「あァ、そうだなァ。俺も久しぶりに聴きてぇ。俺の貸してやるから弾けよ」
「わ、わかりました」
おおお!晋助様の三味線は高級三味線。
紅木の三味線は私も使ってるけど、綾杉胴どまり。
金細綾杉胴は舞台や上客以外には使わないし、異常に高いからそういう店に借りてくる。
だから、結構弾けるのは嬉しい。
嫁いできてから金細綾杉胴は弾いてないし、凄く、すごーく嬉しい。
職人冥利に尽きるってやつですよ。
はああ、この美しいトチ!
しかも、私も津軽三味線を愛用してるし、晋助様のも太棹三味線だから弾きやすい!
もはやこれはご褒美。おうのさんありがとう!
「じゃ、じゃあ、弾かせて頂きますね。何かリクエストは?」
「特にありませんわ。しん様は?」
「俺も特にはねぇな……お前の十八番を頼む」
「十八番なんて無いんですけどね……では、私の一等好きなこきりこ節を」
調弦の為に糸をしごきながらぼうっと思う。
十八番も何も、全部の曲を死ぬ程練習してきたんだ。言ってしまえば全部十八番。
それがプロってもんでしょ?
確かに才能はあったかもしれないけど、私だってかなり努力したんだから。
いい塩梅になった所で、お客さん。今日は二人だけど、に礼をとる。
「それでは不肖、この高杉Aが三味線を務めさして貰います」
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coma7672(プロフ) - すいません!前のコメント間違えて送信してしまいました、、お話最高すぎます!更新楽しみにしています!! (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
coma7672(プロフ) - 高杉晋助 (2020年4月7日 23時) (レス) id: 46f7afe943 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年1月12日 19時