【鬼滅の刃】幸せ者の胃は崩壊寸前

宵七つ ページ7

「そ、そっち？姉さん……」


凄い。さっきからしのぶさんが私の気持ちを代弁してくれてる。


「ええ、とても気になっていたの。Aちゃん、どうなの？」


意外と真剣な表情で聞いてくるカナエ。

まあ、それくらいなら答えられるけど、カナエはお化粧とかに興味あるんだ。

筆先に墨をつけ、しない、と簡素に書いた。



「やっぱりそうなのね。その様子だと、お洒落にも興味ないでしょう？」


頷くと、もったいないわ！と何故か怒られ、用意されてたらしい服を着付けられた。

しのぶさんやカナヲさんも例外ではない。


まるで最初からそのつもりだったかのように、カナエは着物をAたちに着せていった。



「ね、姉さん……せめて、明日にしよう……」


誰も触れていないが、もう既に日をまたいでいるのだ。

さらに幾度となく着せられた事により、帯をきつく締められるだけで吐きそうになっている。

Aもカナヲも、魂が抜けたかのように口を開けて上を向いている。


胡蝶カナエ、恐ろし。


「次はお化粧よー！」

「それはもう明日でいい！！」


青ざめた表情でしのぶさんが叫ぶ。

お願いしのぶさん、そのままこの地獄を終わらせてください。


胃が、胃が持たない。

胃から喉へと汚物が這い上がってきてるから。



「ええ〜？三人ともお人形さんみたいに可愛いから……だめ？」

「うﾞっ」


えっ。

し、しのぶさん、何狼狽えてるんですか。



「ま、まあ……あと少しだけなら……」


姉さん可愛さに私たち見捨てた！！



「姉さんの、お願いだから……」


顔赤くなってるけど、さっきまで青ざめてたしのぶさんはどこへ行ったの。

私がただの傍観者なら微笑ましい程度で済んだのに、これ、いつ終わるんだろうか……。




カナエの着せ替え人形になって数刻、やっと解放された頃には朝日が私たちを照らしてくれた。

眩しいなぁ……太陽ってこんなに暖かいものだったけ。

厠、貸してもらおう……。

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