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さっき買ったメロンソーダの蓋を開けて一本を墓前に置いた。
そしてもう一本の蓋も開け、コツンとそれに当てた。
「Aちゃん、来たな。吉岡、お前があわせたのか?」
湿気混じりのジメジメとした空気に居心地の悪さを感じ、羽織っていた上着を脱いでしゃがみこんだ。
「あの子はどんどん綺麗になるな。それと同時に…」
手に持ったメロンソーダをひとくち含んで気持ちを落ち着かせた。
「甘っ!余計喉乾くわ笑」
線香が燃え尽きて一瞬大きく煙が立ち込めたかと思ったら一気に空中に上がり、跡形もなく消えた。
「どんどん遠くに行っちゃうんだな…」
空はどんより曇り空で、うやむやな俺の心と重なる。
「吉岡。俺は死ぬまで許されなくていいから、どうか…
…どうかAちゃんの記憶の中の苦しみが癒えるようにしてやってくれないか?」
耐えきれずポツポツと降り出した雨が、吉岡の出した答えのような気がして
「また、来るよ。」
そう呟いて、この場を去った。
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「ただいまー。」
長谷川と待ち合わせた時間まで少し空いた為、先に実家へ立ち寄った。
母「おかえりー!早かったね、夜帰るって言ってなかった?」
「友達と会うまで少しぶらぶらしようと思ったら雨降ってきたから時間までここにいるよ。」
持っていた小さなボストンバッグをリビングのソファーに無造作に置いてそれを枕に寝転んだ。
母「ほら、スーツ!シワになるから着替えなさい!」
その言葉も上の空な位にどっと疲れが襲い、気がつくとすっかり眠り込んでいていた。
目を覚ました頃には長谷川との待ち合わせの時間ギリギリで、慌てて飛び起きると着替えもせずに玄関へ急いだ。
母「ごめん、疲れてると思って起こさなかったけど、間に合う?」
「大丈夫、間に合うから。行ってきます。メシ食ったら帰ってくるよ。」
そう言い残して外に出ると雨はすっかり上がっていた。
ここからそう遠くない待ち合わせ場所へ早歩きで向かいながら携帯を見ると長谷川からメールが届いていた。
【長谷川:駅に着いたら電話ちょうだいー!】
これを確認する頃には駅の構内に到着していて、そのまま長谷川に電話を掛けた。
「もしもし、長谷川?着いたぞ。」
ガヤガヤとした雑音の中、長谷川の元気な声が飛び込んできた。
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nikiki(プロフ) - あっ、見えない原因が多分分かりました笑 ありがとうございます (2020年4月26日 15時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - nikikiさん» コメントのお返事遅くなり申し訳ありません泣 3なのですがフラグが立ってしまいまして18歳未満は観覧出来なくなってしまいました…折角読んで頂いているのに申し訳ない次第です!18歳以上で御座いましたらそのままご覧頂けるかと思います(o^^o) (2020年4月26日 2時) (レス) id: 97f9b005f0 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 失礼ですが、どこで3を読めるですか?続きすごく気になります!ありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 初めまして、ストーリー見つけてハマっちゃって一気1と2も読みました。2人の恋、大人になって生活環境変わっても変わらずで居るのに、互いに届けてなくてこっちまで胸ギュッて悲しくなりました。素敵なストーリーありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - てんさん» こんなノロノロ更新に飽きずに見て下さってありがとうございます!何だか手違いで書いたものが消えたりとトラブってました汗)恋って楽しいけど苦しいですよね。2人がどんな選択をするのかたのしみにしていて下さい(^人^) (2019年7月1日 0時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Ika2424 | 作成日時:2019年4月7日 8時