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久しぶりに見た彼女は俺の知っている彼女とは違っていて
美しかったあの艶やかな黒髪は流行りの明るいアッシュベージュに染められていたし、ほぼノーメイクだったあの頃は見る影もなくメイクも丁寧に施されていた。
ただそれだけの事。
それなのにこの苦しいまでの衝撃はなんなのだろう。
チラッとこちらに向けられた目線。確実に目は合った筈なのに、なんでキミはそんな冷たく目線を外すの?
たった2年しか経っていないのに当たり前にあると思っていたものがなくなって、変わらないと思ってたものが変わっていた。
それが今の俺には受け止めきれず動揺した。
皆それぞれに時の流れと上手く連動して成長してるのに
俺の心の時計は止まったままだ…
吉岡の遺影の前で揺れる蝋燭が俺の荒れ狂う心を鎮めようと優しく揺らめいているように見えた。
葬儀も終盤に差し掛かり、最後に吉岡に花を手向けた。
傷ひとつない吉岡の顔は到底死んだ様には見えなくて、思わず手を伸ばし頰をキュッと強めに摘んだ。
「吉岡、起きろよ…」
刺激に驚いて目を開けるんじゃないかななんて思ったんだけど
皮膚に触れた瞬間、一切感じられない体温にサッと血の気が引いた。
吉岡の時間は19年で終わってしまったのだ。もう、二度と吉岡の時計の針は進むことはない。
出棺を待つ間そんなことをぼんやりと考えながら吉岡と自分を重ねていた。
死んで時が止まった吉岡と今の俺は同じ様なものだ。俺という人間はもう自分のものではないのだから。
気が付けば周りには何人もの人集りが出来ていて小さな声で囁かれる。
『西島くん、デビューおめでとう!私ファンなの!あとでサイン貰ってもいい?』
『隆弘くん、久しぶり!覚えてる?一年のとき同じクラスだったんだけど。後で少し時間ある?みんなで話さない?』
あまり酷く当たることもできず、無言で何度も頭を下げてどうにかこの場を立ち去ろうとすると出棺を知らせるクラクションが鳴り響いた。
「吉岡、ごめんな……」
吉岡ならきっと笑って言うかな。
今日は俺が主役なのに何モテてんだよーとかさ。
これ以上ここにいたら爆発してしまいそうで、先に車に戻ろうと長谷川を目で追う。
その目線に気付き、少し離れた場所にいた長谷川が駆け寄って俺の周りを囲む奴らに話しかけた。
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nikiki(プロフ) - あっ、見えない原因が多分分かりました笑 ありがとうございます (2020年4月26日 15時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - nikikiさん» コメントのお返事遅くなり申し訳ありません泣 3なのですがフラグが立ってしまいまして18歳未満は観覧出来なくなってしまいました…折角読んで頂いているのに申し訳ない次第です!18歳以上で御座いましたらそのままご覧頂けるかと思います(o^^o) (2020年4月26日 2時) (レス) id: 97f9b005f0 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 失礼ですが、どこで3を読めるですか?続きすごく気になります!ありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
nikiki(プロフ) - 初めまして、ストーリー見つけてハマっちゃって一気1と2も読みました。2人の恋、大人になって生活環境変わっても変わらずで居るのに、互いに届けてなくてこっちまで胸ギュッて悲しくなりました。素敵なストーリーありがとうございます。 (2020年4月25日 5時) (レス) id: f8ae1d9c82 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - てんさん» こんなノロノロ更新に飽きずに見て下さってありがとうございます!何だか手違いで書いたものが消えたりとトラブってました汗)恋って楽しいけど苦しいですよね。2人がどんな選択をするのかたのしみにしていて下さい(^人^) (2019年7月1日 0時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Ika2424 | 作成日時:2019年4月7日 8時