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美幸『遼の命日なんだけど…。仕事忙しいよね?』
毎年遼の命日の前に絶対連絡をくれる美幸。
私はお葬式以来一度も遼の墓前に手を合わせてはいなかった。
忘れた事など一度たりともなかったけれど、遼にこんな私が合わせる顔など無かったし、西島くんと万が一にも鉢合わせになろうものなら…
考えただけで悍ましくて、気が付けばこんなにも月日は流れいた。
「……行こうかな……。」
何でと聞かれたら特に理由は思い浮かばなかったけど、きっと今や紅白出場歌手にまでなった西島くんが来ることもないだろうし、
この後ろめたさが残る生活を送る私に
遼から喝を入れてもらいたかったのかもしれない。
美幸『本当?!すっごく嬉しい!!遼も喜ぶよ!泣いて喜ぶよ!化けて出てくるよ笑』
19才から変わらない美幸の優しいおっとりとしたはしゃぎ声が電話口から溢れて、
その声に私も自然と笑みがこぼれていた。
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6月。
5年振りの地元の風景は所々変わっていて、時代の流れを感じた。
目一杯控えめにした外見から、いつもの私が滲み出ていないかを駅のホームの汚れたガラスで確認する。
荒んだ私の姿を知るのは地元の人間では奈緒1人だ。
奈緒はすっかり東京が馴染んで、私よりも長く地元には帰省していない。
田舎は落ち着く。とはよく言うけれど、今の私にとってこの場所程落ち着かない場所はないだろう。
美幸「A!」
背後から呼ばれて振り返ると、少しだけ大人になった美幸が手を振っていた。
「美幸!わーっ!久しぶりーっ」
嬉しくなって思わず駆け寄りハグをした。
美幸「もう!ずっと待ってたんだからねっ!それにしてもA随分綺麗になったね。服もオシャレだし、都会の人だーすっかり。誰だかわかんなかったよ。」
まじまじと私を見て、驚いた顔をしてみせた。
「美幸はすっかり大人になっちゃって。ザ!学校の先生って感じ笑」
美幸は小学校教諭の夢を叶えて、今は二年生の担任を受け持つ正真正銘の先生だ。
美幸「まあね、苦労は絶えないけど笑 こんなとこでいつまでも立ち話もなんだから場所変えよっか!」
美幸は私の荷物を引いて彼女の車のトランクに運び入れてくれた。
「ありがとう!」
そう告げた私に、昔と変わらない優しい笑みを浮かべてコクンと頷いた。
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Ika2424(プロフ) - てんさん» コメントありがとうございます!2の方ですよね?まだ一話もかけていない状態でして(TT)一話書き終わり次第すぐに全体公開致しますので今しばらくお待ちください(>_<) (2019年4月7日 15時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
てん - いつも楽しみにしています。恋愛写真のパスワードってどうすればいんですか? (2019年4月7日 13時) (レス) id: 3758975c70 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - ふみさん» 心をチクチク刺激する展開ですが、ワクワクしてもらえたらこれ幸いです笑 恋って…難しいですねぇ〜。 (2019年3月23日 23時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - 心が痛くなるねぇ……この展開。少なからず恋心があったんだろうに…… (2019年3月23日 21時) (レス) id: 017350f460 (このIDを非表示/違反報告)
Ika2424(プロフ) - 楽しみコメント嬉しい限りですーっ(o^^o)コツコツ進めますっ☆ (2019年3月23日 18時) (レス) id: 832d371e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Ika2424 | 作成日時:2019年3月3日 0時