恋愛写真

20 ページ20

.




私に話があるなんて…。夢でも見ているのかと思い、太ももを軽く摘んだ。







「痛っ。」







西島「えっ？何？」






そう言われてハッとして首を横に振った。






「話って？」







単刀直入に聞いた。すると私を見ずに







西島「学校辞めるんだ、オレ。明日で最後。だから、Aちゃんにも最後のあいさつをしとこうと思って。」






そう言ってパッと右手を私に差し出した。







西島「元気でねっ！」






手袋を外しても中々前に出せないでいる私の手を強引にとり、ギュッと握った。








西島「冷たい手！」






そういうと、両手で包み込んで優しくさすってくれた。






彼の手は大きくてゴツゴツしていて、とても温かくて…それが余計に辛くさせた。








彼が居なくなってしまうなんて…







ほんの数日前に感じた絶望感より遥かに大きな絶望を感じ、私は途方に暮れた。








「なんで…やめちゃうの…？」







蚊の鳴くような声で彼に聞くと







西島「夢、叶える為！」








そう言い放った彼の顔には不安も迷いも一切なくて、






とても晴れやかで希望に満ち溢れた素敵な顔をしていたから






私は







一生懸命に自分の悲しみの感情を消した。







「素敵だね！きっと叶うよ！」








精一杯の前向きな言葉







まっすぐ彼に届け……







西島「Aちゃんも叶えてね！夢！」







あの日も肩にかけていた手提げを







彼は指差して、小さくゆっくり頷いた。








「あの…今から登校しますよね？」







これが最後なら








勇気を振り絞って








西島「うん、行くよ！学校。」








自分に正直になってみようかなって









「一緒に遅刻しませんか？」









そう思わせてくれた彼に








西島「ええーっ？笑 本気？笑」








感謝の気持ちを伝えたくて…








「本気、です。」









西島「オッケー！今日だけだよ？笑」








そう言って彼は立ち上がって、来た道を戻り始めた。








「えっ？改札出るんですか？」








西島「いつまでもこんなトコにいたらバレバレよ？サボってるの笑」








そう言われてハッとして、彼の後を置いていかれないように早足で追いかけた。




.





.






.

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す