息抜き俺得短編集2【アイ★チュウ】

あまえんぼの男の子【枢木睦月】 ページ6

私はエトワールヴィオスクールの事務員をしている。と、言うのも、6つ下の幼なじみの枢木睦月くんに「Aがいないとやだぁ！」と盛大に駄々をこねられ、事務作業ならできるかもと思い事務員になった。
まあ当然の事ながら、毎日昼ごはんの前に事務室のドアが開け放たれ、睦月くんに抱きしめられるのだが。そしてそれは今日も例外ではなかった。

「A〜！」
「睦月くん、さすがにみんなの視線が痛いから少し声は抑えて……」
「あのねあのね、今日授業でね〜」
「ねえ聞いてる？」
毎回こんな感じだ。ほとんど寝ているはずの授業の話を頻繁にしてくる。寝てないアピールかなにかなのかな？

そして放課後、柚希さんに書類を渡しに行った時、柚希さんにこんなことを言われた。

「そういえば最近、睦月くんあんまり授業中に寝なくなったんです。」
「え、そうなんですか？」
「はい。何かあったのかなって……」

心当たりはたったひとつだけあった。それはこの間の事だった。

偶然私が業務間の散歩中に教室の前を通り掛かった時のこと。珍しく睦月くんは起きていて(眠そうだったけど)目を擦りながらも必死にノートをとり、頑張って授業を受けていた。そしてその日のお昼休み、睦月くんに私はこう言った。

「睦月くん、今日授業中に起きてたね。偉いね。」

睦月くんはそれに少し怒ったようにいつも寝てるわけじゃないと答えていた。もしかしてそれがきっかけ……？

「もしかして、私がこの間睦月くんがきちんと授業受けてたことをほめてあげたからかも……？」
「そうだったんですね！睦月くん、いつもAさんのお話をしてるのできっと大好きなAさんから褒められたのが嬉しかったんですよ！」
「そ、そうなんですかね……？」

その場はそれで終わった。帰ったらLIMEで睦月くんに聞いてみなきゃ。

つづき→←恥ずかしがり屋のカワイコちゃん【枢木皐月】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す