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「はい、終了。全員ペンを置いて」



––……いや、終わった。本当に。


先生の合図と共にみんなパタパタとシャーペンを置き、同時にどよめきが広がった。もちろん、話題は小テストについて。



「文月、どぉ?どんな?どうやった?」



それはもちろん私も例外ではない。この辛さはひとりでは耐えられない、感想を口にしないと止め処なく不安が溢れ出してしまうに違いないから。

後ろの席からつんつん肩をつついてくる穂積くん、通称ほづみんの問いかけに私も振り返った。



「小テストじゃなかったら詰んでたよね」


「全面的に同意」



パチンと指を打ち鳴らしウィンクする戦友。思わず握手を交わす。



「俺たちは、小テストに、屈してはいけない」


「……そうだね」


本当に。

実感の込もった心からの声、決意のように互いの手をかたく握り返す。



「一番後ろの席の人は、順番になるように集めて」


涼やかな顔をした太田先生の指示に、ガタガタと椅子を引く音が続いた。
お疲れ、と最後にほづみんと健闘を讃えあい、ぱっと手を離す。


春から席替えをしていない現在、名簿順に並ぶ席順によって私は窓側から二列目の一番前に位置している。



……一番後ろの席、誰だったっけ。

いや、別に、誰でもいいのだけど。
ようやくクラスメイトを把握しつつあり、顔ぶれが馴染んできた中で、意味もなくそんなことを考えた。
何の気なしに後ろを振り返る。



宮治。




見た瞬間にぎゅっと心臓を握られるような感覚がした。
慌てて前に向き直る。

身体中が緊張で満たされたのがわかる、が、消しかすをテスト用紙から机に落としながら冷静を装った。


そして、今日が今年度に入って小テストが初だと思い出す。
そうじゃなかったら宮治が答案を回収する事態に、私が緊迫感を覚えないはずがない。

いや、まあ。気まずい。
あれから結局どうするか決められず、現在保留状態。
つまり宮くんが私を一方的にフォローしているということだ。
彼がどういう意図で私をフォローしたにしろ何も反応を寄越さないのは失礼だったかもしれない、と今更になって思い至った。



「宮、どうやった?」


「あかんやろな」


「あかんかぁ」



ほづみんと宮くんの話し声。
私は答案をつまみあげ、できるかぎり普通に通路側に差し出した。



「お願いします」



そしてごく自然な程度の会釈。深すぎないぐらいの。



「……おー」



……普通に受け取られた。普通に。そりゃそうか。





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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです!!毎回更新されるの楽しみすぎます!!💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エコ | 作成日時:2022年3月13日 23時

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