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無事に赤点を回避した吹奏楽部員の夏休みの予定といえば、その大抵が部活である。

補習がないって、本当に最高だ。
去年の冬休みはやらかしてしまって補習に追われていた。おかけでアンサンブルのオーディションがバタバタしたのは未だ記憶に新しい。

配布された活動予定表を見ると、お盆の一定期間を除いてほとんどギチギチのスケジュールになっていた。



昼休み。クリアファイルに挟んだまだもらったばかりの予定表を眺めていると、隣から覗き込んだ和が「うげぇ」と率直で素直な反応をする。


「休みないやん」


「あるよ。失敬な」


「ブラック部活」


「あっ、こらっ!」


「……オフの日、去年より減っとるんちゃう?」


「う」


反論の言葉は出てこなかった。
正直、全国常連と言うと聞こえはいいが、高まる期待に比例して、高い質と多くの練習量を求められる。当然だが、何の努力もなく全国になんか行けない。赤いりんごの色が赤いのと同じぐらいわざわざ口にするほどもない事実だ。


「で、でも、お盆休みは結構長いよ」


「はー……またダラダラ過ごす気やろ。もったいなー」


呆れたようにため息をつく和。失礼だな、と反発したいところだが、夏休みの予定といえば部活、クラスの集まり、和と遊ぶ、帰省、地元の友だちや家族と過ごす……と、去年と大して変わり映えはない。
こうしてゆっくり過ごす夏休みも後になって思い出せばきっといいものなのだろうが、今の和にとっては刺激が足りないと思うんだろう、容易く想像できる。要は年齢を重ねてからはできないことをした方がいい、みたいなアドバイスなのだ、言い方はアレだが。


「じゃあ、和は友だちと遊ぶ以外なんかあるの?」


「彼氏作る!」


「……彼氏?」


予定じゃなくて宣言かい。と、そんなツッコミはさておき、理解できないまま言葉を反芻するばかりの私に、和はフフンと得意げに人差し指を立てた。


「そ!夏やで、いろいろイベントあるし、一緒に過ごす相手、つまり彼氏が欲しくなるのは自然な流れやろ」


「……ん、んん?あ、そっ、か」


「なぁに、Aちゃんはずいぶん余裕あるんやなぁ?」


「な、何それ。ちがうって、実感がないだけ」


じわ、と熱が浮かぶ。


「そんなムキにならんでも!冗談やって!」


調子良く笑う和を黙ってじっと睨み返した。もはや何を言い返したところで墓穴を掘りそうな自分の口に、お弁当に入っていたきゅうりを運び、ややあって深くため息を吐く。




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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです!!毎回更新されるの楽しみすぎます!!💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エコ | 作成日時:2022年3月13日 23時

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