__ ページ31
.
名ばかりで勉強会を騙ったファミレスたむろは子どもの特権なんだと思う。
店員さんによって目の前に置かれた両手規模の大きい器には、これでもかと山盛りのふわふわかき氷が鎮座していた。
昔話盛りを彷彿とさせるこんもりとしたシルエット。ここに別皿で用意された果肉入りシロップ(ジャム?)を自分でかけていただくスタイルらしい。
「最高のやつだ!」
「最高のやつやん」
急にかなりIQの下がった、高校生とは思えないだろう発言に、配膳してくれた店員さんはクスクス笑いながら注文を確認する。
揃っている旨を伝えると、机にある透明の筒に、後ろ手で伝票を入れて去っていった。プロの店員さんだったようだ。
「笑われたやん」
「私たちが女児に見えたのかも」
「ポジティブって一定の線超えると不気味なんや、初めて知った」
「きっとお会計のときおもちゃ貰えるよ」
「否定せんと止まらんのかい」
私と和。それぞれの前にそびえ立つ雪山に、勉強道具はなすすべなく机の端に寄せられた。
ともかく食べなくては始まらない。糖分なくして勉強なし。腹が減っては戦はできぬ。なんてったって無敵の高校生、胃は底なしである。
「どうやってかけるんだろ、これ」
「どうもこうも普通やろ。あ、撮影許可申請」
「申請受理、許可」
「感謝」
彼女は慣れた手つきでスマホを開き、驚くべき早さで構える。
いざ撮られると思うと多少の緊張感はあるが、これは決してSNSのための食べ物ではなく、試験期間を少しでもテンション上げて生き抜こうという自分のための食べ物なのであまり気にしないことにした。
私は別皿のそれを手に取り、慎重に傾けていく。
粘性を伴った液体がゆっくりと器の縁を伝って、かき氷に落ちて少し沈んでいった。
思わず生唾を飲む光景である。
絶景のカレンダー写真に紛れさせても霞まない最高の食べ物に視界をジャックされていた。
「急に無言なん何?」
「最高すぎるから……」
「あ感動で?」
「うん……」
和がフラグを立てるように「そうはならんやろ」と突っ込んだ。
その後、無論それを回収することとなる。
私のスマホには彼女がブルーハワイとパイナップルの果肉のコントラストによって目に暴力を受けて「あへぁ……」しか言えなくなっている姿が鮮明に写されていた。
ちなみに私は無言で撮影することができない人間なので、その映像にはしっかりばっちり私の心底愉快そうな笑い声が入ってしまったわけなのだが。
.
85人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです!!毎回更新されるの楽しみすぎます!!💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:エコ | 作成日時:2022年3月13日 23時