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HR開始のチャイムが鳴った。
壮行会後、息を吐く間もなく使用した楽器を片付けてドタドタと階段を駆け上がっていた私たちは、その音に一度顔を見合わせる。
ぶわっと一気に足元から上がっていく体温。
みんな一段飛ばしのペースは決して落とすことなく、けれど諦めたみたいに少し脱力して教室への道を急いだ。
「あーあ、もぉ、急いだのになぁ」
「ほんと。壮行会のとき、毎回こうよな」
「次も絶対こうなるわ」
「確かに。でも、今回は結構惜しかったよね」
踊り場一つ挟んだ上、二年生の階はあと少しのところだった。
私が教室の方を見上げて笑うのを皮切りに、みんなも笑って、惜しかった惜しかった、とお互いに褒め合う。声を堪えて笑いながら、コソコソ話す光景は悪戯を共有するみたいで面白い。
「おーい、吹部。はよ来ーい」
頭上から声が聞こえた。見ると、一番手前の教室、つまり一組からひょっこりと担任が顔を覗かせている。
「そんじゃあ」「おつー」「また部活でね」
吹奏楽部二年の塊から私含めた一組の三人がふらりと離れた。
他のクラスのみんなは軽い挨拶と共に手を上げて各々の教室へ向かっていく。
壮行会は得意じゃない。自分たちもコンクールや定期演奏会を間近に迎える中、限られた朝練ぶんの時間で二曲も仕上げなくちゃいけない上、楽器の搬入や片付けで体力をすり減らす。
それでも、HRに遅刻しながらみんなと走る時間は、状況のピンチさに反して楽しいものだった。
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今日は朝会があって時間が押していたため、担任は私たちへの小言もそこそこに、いつもの妻子惚気話をカットしてHRを締めた。
あれ、一限って何だったっけ。
片手間に筆記用具を引っ張り出しながら時間割を確認しようとしていると、周りがみんな席を立ち始める。
どうやら移動教室らしい。
「おはよ」
「おはよう……あ、あれ？ノート……」
「教科書ロッカーやろ。持ってくる」
「ありがとう、和」
私はほとんどの教科書をロッカーに詰めている。なぜか私のロッカー状態(何がどういう配置で置いてあるかなど)を熟知している彼女は、慣れた足取りでそちらに向かった。
さて、目的のノートは何かに引っかかって出てこない。
ぐいぐい引っ張り出そうとしていると、不意に私の上に影が覆い被さった。
手が止まる。
弾かれたように顔を上げると。宮くん。
「……へ、？」
私の口からは空気の混ざったなんとも間抜けな声が溢れた。
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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (
レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです！！毎回更新されるの楽しみすぎます！！💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エコ | 作成日時：2022年3月13日 23時
